tateさんの小説

【世界迷作劇場】メタゼルとカビーテル


 その年のプププランドは、何故か大変な凶作でした。
「もうダメだ」
 そう言ったのは、森のはずれに暮らすきこり一家のワドルドゥ父さん。
「子供たちを森に捨てるしかない、それしかない」
 こくこくと、向かい合って座っていたワドルディ母さんも頷きます。
 そんな夫婦の会話をドア越しに聞いていたのが、常に仮面を着けているメタゼルと、ピンクホールとの異名を持つカビーテルの兄妹でした。
「ねえ、メタナイト」
「メタゼルだ」
「ねえ、メタゼル。お父さんとお母さんは、ボクたちを捨てようとしているよ。何で?」
「実はな……」
 メタゼルが言うには、ワドルドゥ父さんにもワドルディ母さんにも、それぞれ恋人がいるのだそうです。子供たちの処遇が決まっていないから、判子まで押してある離婚届が出せないのだそうです。
「飢饉にかこつけて、私たちを捨てるのだろう」
 淡々とメタゼルは語ります。
 本当は、カビーテルの凄まじい食欲が家計を圧迫したせいで、夫婦間に喧嘩が絶えず、遂に仲が壊れたのですが、メタゼルはそんなことは言いません。真実を伝えたところでカビーテルは気にしないからです。
「そっか、じゃあ森に捨てられちゃうね」
 リンゴが沢山なっているといいなぁ、そんなことをぼやきながらカビーテルがベッドに潜りました。メタゼルは小さく溜息を吐きつつも、仮面を被ったままベッドに潜り込みました。

 翌朝、ワドルドゥ父さんは二切れのパンを、メタゼルとカビーテルの二球に差し出しました。
「私たちはもうダメだ。二人は森の中で生き延びておくれ」
 何がもうダメなのかは全く分かりませんが、カビーテルが吸い込む前に、メタゼルはパンを受け取るとさっさと家を出て行ってしまいました。
 メタゼルは、大変な効率主義者なのです。だから、どうでもいい寄り道はしません。これまでも大変な効率主義者っぷりを発揮し、ばりばり仕事をこなしてかなり家計を助けていたのですが、お金があっても食料が買えない今、メタゼルの力もあまり必要ではなくなってしまったのでした。
 慌ててカビーテルも追いかけます。
「ねえ、メタナイト」
「メタゼルだ」
「ねえ、メタゼル。ボクの分ちょーだい」
 メタゼルはパンを一切れカビーテルに渡しました。パンはあっという間にカビーテルの胃袋に飲み込まれていきました。
「ねえ、メタナイト」
「メタゼルだ」
「ねえ、メタゼル。早く森に行こうよー。お菓子の家食べたいよー」
 ぐううううう、とカビーテルの腹の虫が鳴きました。
 メタゼルは仮面の奥で渋い顔をしつつも、自分のパンをカビーテルに全部渡しました。そして、それを一口で飲み込んだカビーテルを尻目に、メタゼルは一振りの剣を掲げ、ざっくざっくと木にマーキングをしながら森の中を進んでいきました。

 どれぐらい歩いたでしょうか。カビーテルが、「メタナイトがあんころ餅に見えざるを得ない」と言い出した頃、小さな一軒屋を見つけました。あたり一面には甘い香りが漂っています。屋根はお菓子、壁はレープクーヘン、窓は透き通った砂糖で出来た、紛れも無いお菓子の家です。
 わーーーーい! と歓声を上げながら、カビーテルが壁に飛びつきました。凄まじい勢いでレープクーヘンを飲み込んでいきます。そろそろ壁に穴が空くな、とメタゼルが思い始めた頃、メタゼルの後頭部を誰かが思いっきり殴りました。意識が遠のく中、メタゼルは後頭部を殴られるカビーテルの姿を視界の隅に置きながらも、仮面が外れませんように、と祈るのでありました。

 カビーテルが目を覚ますと、まず最初に目に入ったのは立派なメタボ腹、そして大変なたらこ唇。よくよく見上げてみると、それはロッキングチェアに座った変なペンギンでした。
「フォアグラ美味しそう」
「フォアグラ違うわ! 全く……なんて食い意地の這った子なんだろうね!」
 ぶつぶつとメタボペンギンがぼやいています。
 そういえば、メタゼルの姿がどこにも見えません。
「あれ? メタナイトがいない……」
「仮面餅なら外の小屋にいるぞ。お前たちはワシの夕食だ。こんな高貴なワシに食されることをありがたく思うがよい。がっはっは。とりあえずピンク餅、お前はワシの召使として働くのだ」
 カビーテルが外に飛び出すと、鉄格子のはめられた小屋に閉じ込められているメタゼルを見つけました。
「メタナイト!」
「メタゼルだ」
「メタゼル! 何か変なメタボペンギンがいるよ。ボクたちは夕食だぐつぐつペロンとか言ってる! どうしよう!」
「アレはメタボペンギンではない。魔女デデデだ。子供たちをさらっては頭からペロンしているらしい。とりあえずはヤツのいうとおりにするんだ。機を見て懲らしめてやろう」
 メタゼルはメタボペンギン、ならぬ魔女デデデを退治しようと考えているようです。カビーテルも魔女デデデのフォアグラを考えると、それはいいアイデアだと思いました。

 それから数日、カビーテルは魔女デデデにこき使われ、一方のメタゼルは何をするでもなく食事だけを与えられていました。メタゼルを肥えさせ、フォアグラになったところを食すためなのだそうです。頻繁に魔女デデデがメタゼルの様子を窺いにくるのですが、メタゼルは一方に肥えません。メタゼルに与えられる食事の大半はカビーテルの胃の中に納まっていたからです。加えて、暇をもてあましていたメタゼルは、小屋の中で自己鍛錬をしていたのです。肥えるわけがありません。むしろ、魔女デデデにこき使われているカビーテルを羨望の眼差しで見つめていました。メタゼルはちょっとMっ気があるのです……もとい、日がな、何をするでもなくダラダラ過ごすのが苦手なのです。
 メタゼルが肥えないことにイライラしてきた魔女デデデは、次第にカビーテルに八つ当たりをするようになりました。ハンマーを取り出すと、唐突にカビーテルをぴこぴこ叩きます。餅並みの弾力を持つカビーテルが、半日以上ぺったんこになってしまった日もありました。

 ある日、カビーテルが遂に切れました。
「もう! ハンマーでげしげし殴らないでよね! デデデなんてこうしてやるぅ」
 炎が燃え上がるかまどの前に立つ魔女デデデの背中に、カビーテルはムーンサルトキックをぶちかましました。ファイターをコピーして、ダッシュ+Bボタンで繰り出すことができるアレです。
 元々、少し前の方に重心のあった魔女デデデは体を支えきれず、かまどの中にすっこけました。
「あっち! あっちあっちあちあちあちゃちゃーーー!!」
 魔女デデデが悲鳴を上げています。いつの間に小屋から出てきたのか、メタゼルがカビーテルの横に並びました。
「もう、もうこんなことはしない! だから助けてくれー」
「ダメだよ、デデデ! ボクはフォアグラが食べたいんだ」
 その様子をまんじりと見つめていたメタゼルが、徐にこういいました。
「カビーテル、魔女デデデを助けてやろう」
「な、何で!? ボクの食事を邪魔するの!?」
「違う。魔女デデデは、実はデデデ城の主なのだ。ここで恩を売っておけば、美味い食事に今後もたんとありつけるぞ」
「な、何故お前が、ワシがデデデ城の主であることを知っているのだ……助けてくれるのなら、末代までもてなすぞ!」
 メタゼルのいうとおり、魔女デデデの真の姿は、デデデ城の主、デデデ大王だったのです。そして「末代までもてなす」という言葉に、カビーテルもしぶしぶフォアグラを諦めたのでした。

 メタゼルの手により助けられた魔女デデデは酷く反省し、心を入れ替え一城の主、デデデ大王に戻ったのでした。その際、メタゼルとカビーテルの二球を連れて帰ったのですが、あまりにエンゲル係数が高くなりすぎ、城の財政を圧迫したため、カビーテルは放出されてしまいました。
 そして今では、メタゼルはデデデ大王の部下として、カビーテルは魔女デデデを倒した英雄として、プププランドで平和に暮らしているそうです。

 おしまい。
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