tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 16: 骨肉でニトロな争い


 ぜぼしんとな〜ビィがポピーブロスSr.の元に居座ってから数刻……いや、かなりの時間が過ぎている。ぜぼしんとポピーブロスSr.は全く口を開かない中、な〜ビィとジュキッドは何故か意気投合し、ぜぼしんの傍らで盛り上がっていた。三人の膝元には何故か湯飲みと煎餅が置かれている。
「ほう、な〜ビィ殿も体術をたしなんでおられるのか」
「そうよ。といっても、かなりの我流だけどね。ジュキッドさんは……見た目からして柔道をやっていそうだけど」
 な〜ビィは胡坐をかいているジュキッドの衣装をまじまじと見つめる。真っ白な胴着に黒帯を巻き、その耳は潰れて顔に張り付いている。どう考えても、柔道家に分類される見てくれだ。
「左様、ワシは柔道一筋にここまでやってきたのだ」
「ジュキッド君は見た目からして丸わかりだからね☆ ま、人のポリシーに口を挟む気はないけど」
 離れたところで黒い球体を弄っていたポピーブロスSr.が、ようやく口を開いた。
「見た目でどういう攻撃をするか相手に悟られたら、そりゃ不利だわな」
 くっくっく、とぜぼしんが小さく笑った。失礼な二人の物言いにもジュキッドは気分を害した様子は無く、ぐびりと一口茶を飲むと湯飲みを床に置く。
 刹那、湯飲みがガタガタ揺れたかと思うと、二、三度飛び跳ね倒れた。そして聞こえてくる轟音。
「にゃっ!? 何が起こったの!?」
 な〜ビィの問いに誰かが答えるよりも早く、クルーの一人が転がり込んできた。
「ジュキッドさーん! Sr.さーん! か、カービィが来ました!! さっき、あそこに置かれていたシャッツオを床ごと爆破しやがりましてっ、コチラに向かって来ています!」
 ピンク餅テラコワス! と身震いをしたクルーはいそいそと戻っていった。が、あの様子だとカービィを迎撃することもなく、どこぞの隙間にでも隠れたことだろう。
「てことは、先ほどの音は床をぶち抜いたときの音ってことかな。ぜぼしん君達はどうするかい?」
「ここは傍観させてもらうよ。俺達の仕事は、カービィの撃退じゃない」
「わかった。それじゃ行こうか、ジュキッド君」

 ポピーブロスSr.達の背中を見送ったぜぼしんとな〜ビィは、手頃な物陰に潜り込んだ。こそっと頭だけを出し、様子を窺う。
 間も無くやってきた茶髪の少年と、紫色のつなぎを来た青年の二人組とポピーブロスSr.が何か言い合いを始めた。もっとも、最初に仕掛けたのはポピーブロスSr.で、問答無用で転がした爆弾が茶髪の少年の手の中で爆発したのだから、いちゃもんを付けられても文句は言えない。
「あの男の子がカービィなのかな」
「状況からしてそうみたいだな」
 一通りの押し問答を繰り広げた結果、ポピーブロスSr.がカービィと、ジュキッドが紫色の青年と戦い始めた。そしてあれよあれよという間にジュキッドは伸された。
「あーあ……ジュキッドさん、やられちゃった」
「近接戦闘を得意とするジュキッドでは、中距離から攻撃仕掛けてくる相手には分が悪かったってことだな。……ん? あれは」
 倒れながらも青年に追いすがるジュキッドの背後から、銀髪の少年がそろそろと近づいてきた。
 あの少年は、一体どこから現れたのだろうか。ぜぼしんが視線を周囲に走らせると、通風孔の一つの鉄格子が外され、暗い穴がぽっかりと空いていた。
 随分とイレギュラーなところから出てきたのだな。
 ふむ、と内心感心するぜぼしんの前で、少年はジュキッドの頭上に黒い球体を遠慮なく降らせる。鈍い音が響きわたった。
「うわ、痛そう……」
 と呟いたのはな〜ビィ。
 続いて少年は同じような球体を懐から徐に取り出すと、それからひょろんと伸びた縄に火をつけた。
 ポピーブロスSr.!! 受け取らんかぃー!! と少年が怒鳴る。反応したポピーブロスSr.がそれをキャッチする。次いで凄まじい爆音と共に、もうもうと沸き起こった煙がこの空間を覆い隠した。
「ジュキッドさん達、負けちゃったね」
「ああ」
 煙が晴れるまでに数刻、まんじりと状況を窺っていたぜぼしんとな〜ビィは、無様にひっくり返ったジュキッドとポピーブロスSr.の姿を見つけるまでもなく、二人がカービィ達に負けたことを悟っていた。所詮は中ボス、ピンクの悪魔に歯が立たないのは道理である。
 ぜぼしんとな〜ビィが潜んでいることに気がついていないのか、カービィは乱入してきた少年に抱きついた。
「Jr.久しぶり!」
「苦労してたみたいやったからな、横槍入れさせてもろたで」
 そんな会話が聞こえてくる。
「Jr.……? Sr.さんの弟君?」
「みたいだな。あそこの通風孔から入ってきたようだぜ」
 ぜぼしんは天井に程近い一点を指差す。鉄格子の外された通風孔だ。
「あんなところから? あそこって通風孔だよね。何で?」
「多分、俺達クルーに見つからないように通風孔を通って移動しているんだろうな。……あの通風孔なら出口は一つだ。先回りして、出てきたところを捕まえるか」
「了解っ」
「きっとそこに、もう一人の侵入者もいると思う。これで問題解決ってこった」
 ぜぼしんとな〜ビィはひっくり返ったポピーブロスSr.達を気に掛けることも無く、物音を立てないようにそっとその場を離れた。

           ◆

「本当に顔見知りだったんだな、お前ら」
 素っ頓狂な声を上げたのは、ふぇあだった。みらまたがそんな相方を一瞥する。
 ここはハルバード艦底部に位置する一連の砲座群。ハルバードに侵入したカーヴィが砲座群を襲撃している現場に、みらまたとふぇあの二人が駆けつけ、そして対峙するに至るわけだ。
「ああ。前も言ったとおり幼馴染みなんだ、アイツは。まさかこんなところで、こんな形で再開することになるとは思ってもみなかったけどな」
 みらまたはそう言うと、煙の中から姿を現したカーヴィに視線を向ける。
 シンプルな着物に、帯には和刀をさした幼馴染み。何事も器用にこなしていた彼のことだ、あの和刀も攻撃手段の一つとして行使してくるだろう。
「あのときの貸しを返してもらう」
 カーヴィが腰溜めに、刀の柄に手を掛けた。
「……あのときの貸し? って何だ」
「俺が知るかよ」
 口を開かないカーヴィの代わりに、ふぇあが答える。
 答えつつ、ふぇあは対峙する和風侍に視線をやった。みらまたの得物に比べれば細身の剣を構え直す。正眼に構えるみらまたとは違い、ふぇあは刃が床と平行になるように柄を握る。
 そしてじりじりと、少しずつにじり寄っていく。
「カーヴィ、お前何しに来たんだ。あのときの貸しって何だよ」
「ふん……そうやって、忘れた振りをして白を切り通せると思うなよ」
 カーヴィの体を淡い緑色の光が包み込む。肉体的な能力を一時的に増幅させる、レインフォース系の魔法だろうか。何が強化されたのかまでは、みらまたにはわからない。

「みらまた、やっちまっていいのか?」
「……やるしかねぇだろ」
 先に動いたのはカーヴィだった。床を一蹴し、体を前方へと打ち出す。弾丸の如く、床面すれすれを飛び、まっすぐにみらまたへと突っ込んできた。
 ブロードソードを床に付き立て、カーヴィの突進を受け止める。金属の刃がぶつかり合い、火花が飛び散った。着地したカーヴィの背後から、ふぇあが攻撃を仕掛ける。頭上から振り下ろされた剣を和刀が受け止めた。そのままカーヴィは僅かに刀を傾け、ふぇあの攻撃を横に流す。
 体勢を立て直したみらまたがブロードソードを横に凪ぐが、既にカーヴィの姿は無く、遥か後方、二人の間合いからは離れたところに下がっていた。
「む、思ったより速いな」
「レインフォース系の魔法を使っていた、そのせいだろ」
「なるほどー」
「俺が先に仕掛ける。動きを止めたところで何とかしろ」
「何とか……ねぇ」
 みらまたがカーヴィに向かって跳んだ。放物線の頂点でみらまたはブロードソードを縦に一度大きく振り、その重量で加速を付ける。一気にカーヴィの懐に飛び込むと、ブロードソードの慣性に任せて頭上からの一撃を繰り出した。
 カーヴィは右に跳んで攻撃を避ける。
 反動で浮いたみらまたの影に隠れ、ふぇあが距離を詰める。たたらを踏むカーヴィを射程に捕らえたところで、みらまたの影から飛び出した。そして右肘を後方に引く。
 不意に現れたふぇあを認識したカーヴィは、ふぇあの攻撃に備え、刀の背に左手を添える。
 だから、というわけではないが、ふぇあは剣を無造作に突き出した。これまでに無かった攻撃パターンに、カーヴィの反応が一瞬遅れる。咄嗟に身をよじったカーヴィの着物を刃先が切り裂き、左腕の肉が深く切り裂かれた。
 ふぇあが大きく跳び、距離を取り直す。みらまたもカーヴィの一撃に対応できるだけの距離を取り、ブロードソードを構えていた。
「くっ……」
 カーヴィは依然として得物を右手で握ったまま、左腕の傷を庇うことはしない。彼の左手の指は動いており、致命的な傷にはならなかったようだ。が、じわじわと血が流れ始めていた。
 カーヴィは口惜しげに唇を噛み締める。そして、苦々しい顔付きで言葉を吐き出した。
「続きはまた後だ。覚悟しておくことだな、みらまた」
「待て! あのときの貸しって何……」
 みらまたが言い終えるよりも早く、カーヴィの姿はゆらりと滲むと消えた。
「テレポート……外に逃げたかな」
「いや、アイツの性格ならそれは無い。傷を癒したら、また俺達……いや、俺の前に現れると思う」
「そうかい、じゃあ俺達もしばらくは休憩だ。……寝るか」
「寝るな!」
 みらまたの怒声もどこ吹く風、次の瞬間、ふぇあは舟をこいでいた。

           ◆

 ぜぼしんとな〜ビィは、とある一つの扉の前にいた。扉に掛けられた札には、「物置」とだけ書かれている。ぜぼしんが覗き窓から中を窺うが、雑多に日用雑貨が詰め込まれているだけの薄暗い空間だ。人の気配は無い。
「誰もいないな……」
「弟君と一緒にいた人もいない?」
「いないようだ」
 な〜ビィの問いかけに、ぜぼしんは端的に答える。
 部屋の中で待つか? いや、それでは通風孔からやってくる相手には、こちらの姿が丸見えだ。
「ここで、Sr.の弟達がやってくるのを待とう。通風孔から出てきたところで、乗り込む」
 了解、とな〜ビィは頷いた。

 ポピーブロスJr.は星見草を伴い、元来た通風孔を辿って来ていた。
「お兄さんがいたんですか?」
「せや。ハルバードに乗っとることは知っとったけど、まさかあんなところに居るとはなぁ」
「で、カービィさんと戦っていた、と」
「そう」
「んで、その場の勢いで伸しちゃった、と」
「その場の勢いつーわけやないけどな。元々、うちらは仲良し兄弟やないし」
 取りとめも無い会話を交わしつつ、二人は通風孔が繋ぐもう一つの部屋に出た。ポピーブロスJr.が先に降り、星見草が続く。そしてポピーブロスJr.は取り外した金格子を元に戻した。
「これでよしっと」

「……来たぞ、俺の合図で飛び込む」
 了解、とぜぼしんの耳元でな〜ビィが頷く。彼女の吐息がぜぼしんの耳に触るが、ぜぼしんは特に気にした様子も無く、覗き窓から部屋の中を凝視している。、
 通風孔から這い出てきた二人組の姿を追う。
 銀髪の少年が、外れた金格子を手早く元に戻している。その間、もう一人のローブの娘は手持ち無沙汰に少年の手元を見つめていた。
「……よしっと。さ、行くか」
 少年の動きが止まった。手の中にあったドライバーをサイドポーチに戻し終えたところで、ぜぼしんは物置のドアノブに手を掛けた。な〜ビィを一瞥する。真剣な双眸でぜぼしんを見つめ返す。
 一呼吸置くこともなく、ぜぼしんは勢い良く扉を押し開けた。
 部屋の中にいた二人が反射的にこちらを見た。すぐに銀髪の少年がしまった、という顔をする。物置には明り取り用の窓は無い。室外に繋がるのは、ぜぼしんとな〜ビィが押さえている扉か、先程少年が格子をはめた通風孔しかない。
 ぜぼしんが直に突入しなかったのは、彼らの退路を塞ぐためだったようだ。なるほどなー、とな〜ビィは感心する。
「お前さんがポピーブロスSr.の弟君か」
 銀髪の少年はぎゅっと唇を結んでいたが、間も無く観念したかのように肩をすくめた。
「せや。ここで待ち伏せしとったつーことは、さっきの兄貴とのやり取り、見られてたってことやな……アカン、やられた」
 諦めを口にしつつも、ポピーブロスJr.は緊張を解かない。出口が一つしかない以上、彼らはな〜ビィ達をいなし、ここを突破するしか他にない。その方法を考えているのか、タイミングを窺っているのか。
「弟君、一つ聞いていいかな」
「……何や」
「君は誰の指示でここに来た?」
「指示やって?」
 きょとんとした顔をしたのも一瞬、ポピーブロスJr.は突然ケタケタ笑い出した。
「兄貴に何を吹き込まれたんかは知らんけど、そんなんないわ。そういうアンタこそ、それ、盗賊ギルドのグライペルやろ。そんな人間がこんなところ何しとん」
 ポピーブロスJr.がぜぼしんの手に向く。ぜぼしんは真っ黒な指ぬきグローブを身に着けていた。な〜ビィはそれを気に掛けたことは特に無かったが、何か意味のある事柄だったようだ。
「なるほど……志を同じにする者ではない、ということだな。な〜ビィ、戸口は任せるよ」
 そう言い捨てると、ぜぼしんは腰に下げていたナイフを鞘ごと手にすると、床を蹴った。な〜ビィも拳を作る。侵入者を追い出せとは命令されたが、殺せとまでは言われていない。
 ぜぼしんの初撃を左に飛んでかわすポピーブロスJr.。少年はぼんやりと立っていた星見草を巻き込む形で床の上を転がった。
 すかさずぜぼしんが間合いを詰める。突き出したナイフが、木箱を打ち据えた。星見草が抱えていた救急箱を、ポピーブロスJr.がぜぼしんに向かって投げたのだ。
 眉一つ動かさず、ぜぼしんは木箱を叩き落す。それは派手な音を立てて、床の上に落ちた。中身が当たり一面に飛び散る。包帯が床の上を転がり、ぜぼしんのブーツにぶつかって向きを変えた。
「非戦闘員の割には、なかなか動きがいいな」
 ぜぼしんが淡々とした口調で、一歩、また一歩、もつれ合ったまま倒れているポピーブロスJr.達の方へと歩み寄っていく。後三歩でぜぼしんのナイフがポピーブロスJr.の背に届くというところまで近づいたところで、ポピーブロスJr.の腕が振られた。
 その手の中から球体が三つほど、宙に放たれる。
 次の瞬間、部屋中を閃光が満たした。

「な、何!?」
 括目した状態で閃光を浴びたな〜ビィの視力が戻った頃には、物置の中ではぜぼしんが一人立ち尽くすだけだった。
 な〜ビィの視線に気がつくと、ぜぼしんは小さく肩をすくめて彼女の方にやってきた。
「あれは閃光弾だな。確か、ポピーブロスの兄貴の方は爆弾魔だったな。だったら、弟の方も爆薬の類に明るくても不思議は無いか……やられたよ。非戦闘員だと油断した俺のミスだ、すまん。な〜ビィ嬢、目は大丈夫かい?」
「え……うん。目は大丈夫」
「よし。では追跡に出るぞ。ハルバードの中でも機密情報、特に兵器類に関する情報が多いところにアイツは現れるはずだ」
「機密情報が多く含まれている兵器を探しているってこと?」
 多分な、とぜぼしんは頷く。
「通風孔の構造も把握していたところを見ると、かなり艦内部のことは把握しているようだからな」
「だったら、主砲かリアクターか武器格納庫か……その辺に現れるってことだね」
「ここからだと武器格納庫が近いな。行ってみよう」
 ぜぼしんはくるりと背を向けると、さっさと歩き始めた。
 盗賊ギルドの話とか志とか、気になることは幾つもあったが、な〜ビィはそのことについて尋ねることはしなかった。

           ◆

                    To be continued...

                    2009Feb15 written by tate

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