tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 14: テイク・ジ・オフェンシブ


 デデデ城の一室で、カービィとギムは休息をとっていた。
 ベッドの上で大の字になり平和そうに寝息を立てているのは、カービィ一人だけ。ギムと言えば、窓際のテーブルにラジオを置き、桟に腰を掛けてスピーカーから流れてくる音に耳を傾けている。
 金属から成る体を持つギムは、カービィらのような睡眠をとる必要はない。インプットされた情報を整理・再構築する時間は必要だが、彼のメモリーバンクは一ヶ月稼動し続けたとしてもパンクする事はないほどの容量はある。
 ラジオから流れ出る音楽が、しっとりとしたヒーリングミュージックからポップ調に変わった。
 『ブロントバートのおはようラジオ〜♪』という歯切れの良いDJの声が、音楽に乗り、スピーカーから溢れ出てくる。
 ギムは時計に目をやった。夜の帳が取り払われる時間も近いようだ。あと一、二時間もすれば、デデデ城の人々も活動を開始するだろう。
 相も変わらず平和な寝息を洩らす相棒を一瞥し、ギムは再びラジオの音に耳を傾けた――のもつかの間、ぷつりとラジオから聞こえてくる音楽が途絶えた。
『ラジオをお聞きの皆さん、大変です! グレープガーデンに、戦艦ハルバードが現れました! な、なんと! ハルバードが砲撃してきました。今、まさにグレープガーデンの街が攻撃されています』
 代わりに聞こえてきたのは、DJの叫び声。
 ノイズ交じりの絶叫のバックには、遠くで起こっている爆発音が聞こえてくる。
『わたくし、ブロントバートはできる限りスタジオに残り実況を続けたいと思いますが、ここもいつまで持』
 DJの声がザーというノイズの向こうに消えた。ラジオ局そのものが攻撃されたか、デデデ城に向けて電波を飛ばしているアンテナでも破壊されたか。
「これは……大変です。カービィ、起きてください!」
「むにゅむにゅ……ダイナブレイドの丸焼きは流石に大きすぎるよぅ……」
 ギムは、毛布を抱きしめて丸まったカービィの襟首を掴む。そして廊下に出ると、暗がりの向こうから急ぎ足でやってくるスターリンの姿が見えた。

           ◆

 グレープガーデンの安宿の一室で眠っていたシルフィードは、激しい揺れに飛び起きた。
「な、何!?」
 目を覚ましたシルフィードの双眸に、すっかり変わり果てた部屋が映った。室内の備え付けの家具は軒並みひっくり返り、壁に貼り付けてあった鏡も、見る影なく床の上に散乱している。
 シルフィードがあれやこれやと考える間も無く、外から爆音が響いてきた。窓枠にはめられたガラスが、今にも割れそうなほどにビリビリと震える。慌ててブーツを履き、時計を見る。まだ五時前だ。
 マントを羽織り、通りに飛び出したシルフィードの目の前には、右往左往する人々の群れがあった。真っ白な閃光と共に、再びの轟音。程近い場所に爆弾でも着弾したのだろうか。空を見上げると、ようやく東側が白み始めた藍色のスクリーンの中に、翼を広げた金属の鳥が浮いている。
「何あれ……」
 事態が全く掴めないシルフィードは、人の波に飲み込まれないように路肩まで下がり、深呼吸を二回した。落ち着け、落ち着くんだ私。このような混乱を体験するのは初めてではない、伊達に冒険者はやっていないということだ。
 少し思考が整理できたところで、懐からポータブルラジオを取り出す。スイッチを入れると、雑音と共に人の声が聞こえてきた。
『現在もグレープガーデンは攻撃を受け続けています。えー……戦艦ハルバードからの攻撃以外にも、どこかから爆撃されているとの情報が今入ってきました。何処から爆撃されているのか、情報が入り次第お伝えします。グレープガーデンの皆さん! 落ち着いて行動してください――』
 良かった、地元のラジオ局はまだ生きている。
 ラジオを握り締めたままシルフィードが逡巡したのも一瞬、直に彼女は人波を掻き分け、ラジオ局に向かって駆け出した。

 グレープガーデンのラジオ局は、小高くなった雲の丘の上にある。そこからにょっきりと突き出たアンテナは健在で、今もシルフィードが胸からぶら下げているラジオがその電波を拾い続けている。
 ここにやってくるまで、襲撃されているというグレープガーデンの街を突っ切ってきた。ハルバードの砲撃で崩れた建物はいくつもあったし、陥没したレンガ畳みの道路も数知れず。
 だが一際の轟音を立て、まばゆいばかりの閃光を撒き散らす砲撃は、不思議とグレープガーデンの街に物理的な被害をもたらしていなかった。それは、道中シルフィードが閃光に巻き込まれながらも、温度変化にも爆風にも晒されなかったことからも間違いない。、ただ、その爆音のおかげで未だに聴力は半分ぐらいしか戻ってきていないが。
 一度足を止め、呼吸を整えるシルフィードの耳に、ひゅーん……という何かが高速で飛んでくる音が聞こえた。
「な……」
 空を見上げた時には時遅し、飛んできた物体がラジオ局に衝突し、激しい粉塵を発生させながら雲とレンガから成るその建物は崩れていった。
「ウソ!? まだブロントバートに話聞いてないんですけどっ」
 シルフィードは、もうもうと立ち昇るダークグレイの粉塵の中に突っ込む。幸いなのか、そういう類の代物だったのかはわからないが、炎の手は上がっていない。飛び込んできた物体……おそらくはハルバードから発射された砲弾は、純粋にラジオ局の壁をぶち抜き、建物を崩壊させただけのようだ。
「誰か! というか、ブロントバートさんいませんかー!!」
 瓦礫の下からほうほうの体で数人の人影が這い出してくる。それらの人々に手を貸しながらも、シルフィードはブロントバートを探して叫ぶ。
 瓦礫の山を一巡し、それでも尚お目当ての人物には行き当たらない。自力で這い出し、どこぞへと行ってしまったのか、それとも瓦礫の中でぺしゃんこになって……
 ああもう! タイミング悪すぎ!!
 頭をぶんぶんと振るシルフィードの耳に、瓦礫の下から助けを求める声が飛び込んできた。僅かな隙間から見える人の手が、力なく振られている。

「いやいや助かった助かった。マイクを持ったまま生き埋めになるとはな」
 シルフィードが周囲に助けを求め、瓦礫を退かして何とか引っ張り出した人物が、奇遇にも彼女が探していたブロントバート当人だった。スタジオに残り、ギリギリまで実況を続けていたところを砲撃されたのだという。
「で、アンタ。何だっけ……」
「シルフィードです」
「そうそう、シルフィードさん。アンタ、今回のブルータスの決起について知りたいんだったか?」
 はい、とシルフィードは一度頷く。
 彼女達は崩壊したラジオ局に程近い場所に設営されたテントの中に避難していた。ブロントバートの怪我を治療する傍ら、シルフィードは当初の目的を果たすために、怪我人に突撃をかましているのである。
 そんなシルフィードの姿に、周囲の者は当然いい顔はしていないのだが、当のブロントバートは気にするなと、シルフィードに椅子を勧めたのだった。
「ああ、確かにメタナイトからの声明を受け取ったのは、このオレだ。『プププランドを変える』とは聞いていたが、まさか本当に実力行使に出るとはな……ふう」
「本当に実力行使に出る……とは? どういう意味ですか?」
 あーあー、そこかぁ……とブロントバートが唸る。
「いや、何というか……無論な、プププランドを支配するために決起しているんだから、武力行使するのは当たり前なんだが、こんな平和ボケした国なんざ、連中にとっちゃ武力行使するまでも無く落とせる気がしてな。多くの住民達も、まさかグレープガーデンを攻撃してくるたぁ、思っていなかったはずだ」
「確かに……プププランドを支配したいのなら、デデデ城を攻撃するのが手っ取りばやいですよね」
 そうなんだよ! とブロントバートが身を乗り出した。
「それに解せない点もある。実際にオレが見たわけじゃないが、奴さんら、奇妙な武器を使ってきているらしいじゃねえか」
「奇妙?」
「そうだ。人や建物に物理的な被害を与えない砲弾を使っているらしい」
「それ、私見ましたよ。確かに不思議な攻撃でした。光がまぶしいばっかりで、熱も何も出ない……」
 ふぅむ、とシルフィードは黙り込んだ。
 グレープガーデンが攻撃されたこと、そして不思議な砲弾を使っているということ……これらはデデデ大王もおそらく把握していないに違いない、報告する価値はあるだろう。
 シルフィードはブロントバートに礼を述べると、テントを後にする。そして、デデデ城への移動手段を探しに、未だ断続的な攻撃を受けているグレープガーデンの街へと駆けて行った。

           ◆

>>現在カービィはハルバード目指して出撃準備中。

           ◆

                    To be continued...

                    2009Jan31 written by tate

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