tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 12: 空を統べるもの


 強引に強奪したワープスターを撃墜されたカービィたちは、ハルバードへ侵入する手段を得るためにデデデ山の頂上を目指し坂道を歩いていた。よたよたと坂道と奮闘するカービィの後ろから、ギムが涼しい顔をして声を掛けた。
「カービィ、これからどうするのですか?」
「うーん……それが問題なんだよね。ワープスターでは近づけない、だけどハルバードの航行スピードについていける乗り物なんて、ワープスター以外にはないんだよね。うーん……」
 カービィは腕を組み、どうしたものかなぁと唸る。
「高速で空を移動できる事が出来ればよいのなら、乗り物にこだわる必要はありませんか? カービィ」
「うん? どういう事?」
「いえ、鳥ならば空を飛んで近づく事が出来るかと思いまして。私達二人を乗せて運ぶ事が出来る鳥がいるかどうかは存じませんが」
「それだ!」
 ポンと掌を打ったカービィの声が裏返った。
「そうだよ、ダイナブレイドに応援を頼めばいいんだ。色々と恩も売ってあるからきっと助けてくれる!」
「ダイナブレイド……ああ、プププランドで繁殖を行う怪鳥のことですか。確かにあのサイズならば私達の重量など大した負荷にはならないでしょうし、ハルバードの航行スピードにも勝るかと思います。しかし」
「しかし?」
「かの怪鳥は今何処に居るのですか?」
「あ……」
 茶髪の少年は、あーーー!! と悲鳴を上げると頭を抱え込んだ。そうだった……と背中を丸めて呻く事暫し。
「ま、まぁこのままデデデの所に行こう。デデデなら多分何とかしてくれると思うし、ダイナブレイドが捕まらなくてもデデデ自身が何とかしてくれると思うし……」
 カービィの脳裏を、ナイトメアと戦った時の記憶が過ぎる。
 確かあの時、夜空へと飛び立ったナイトメアを捕まえるために、デデデはカービィを空へと打ち上げた。どんな手を使ったのかは知らないけど、同じ要領でハルバードを追跡する事は出来るんじゃないかと思う。
 ま、大回転しながら空を飛ぶのはあまりいい経験ではなかったけど……


 デデデ城を背中に、木の上で遠眼鏡を覗き込んでいたtateは、丘の下からやってくる人影に気が付いた。
「んー? 何ですかね、あの人影は……むむ? カー……ビィ??? これは大変、大王様に知らせなければ!」
 ずりずりと木の幹を不恰好に滑り降り、城の一室へと走り出した。

 黄昏色が徐々に色褪せる部屋の中では、デスクに向かうデデデ大王とスターリンが向かい合っていた。バタービルディングへと向かっていたスターリンが、デデデ大王の下に戻ってきたのだ。
「――口頭ではありますが、以上が報告になります。改めて紙に書き起こしますか?」
「いや、いい。シャインとブライトが噛んでいる事がわかっただけで、今は十分だ。次は連中と手を組んででも実現しなければならない技術が何かという事と、その理由だな。落しやすそうな方から攻めてくれて構わないが、どちらかと言えば理由を直球で知りたい。技術から理由が推測できれば良いが、ブルータスの科学技術は正直その意図が読めるものはあまりなさそうだからな」
「承知しました。……といっても、一朝一夕では答えは出ませんよ?」
「ああ、それなりの時間が掛かる事は覚悟しているさ。頼んだぞ、スターリン」
 会話が一段落着いたのを見計らったかのように、ドアノッカーが叩かれた。
「入れ」
 失礼します〜、と顔を出したのはtateだった。
「何かあったのか?」
「はい。ええとですねー、カービィさん達がこちらに向かっているようなのですよ。だらだらと歩いている様子が見えましたです」
「だらだら歩いて……って、今彼らはハルバードを追っているのでは?」
「スターリンさんもそう思いますよねー。私もそう思っていたんですけど」
 右手の羽ペンをインク壺に投げ入れ、デデデ大王が立ち上がった。
「tate、お前に確保してもらったアレが役に立つ時が来たぞ」


 だらだらと続く坂道を登りきったカービィ達を出迎えたのは、巨大なシルエットだった。「な、何だ……」
 目を細めて、夕日の中に佇む影をまじまじと見つめるが、やはりそれはただの影だ。わなわなと打ち震えながらたたらを踏んだカービィの背が、ギムにぶつかった。
「見てください、カービィ。人影が」
 指差す先に視線をやると、確かに巨大なシルエットから細身で人間大の影がするりと分離した。人影は両手を腰に当てると、ふんぞり返った。
 さもそれが自然だと言わんばかりの偉そうな居住まいに、カービィはピンときた。平素から偉そうに振舞うヤツを数えるのには、右手の人差し指が一本あれば十分なのだから。
「デデデ!」
「おう、カービィか」
 細身のシルエットことデデデ大王と、気さくに挨拶を交わす。
「お前がここに来たって事は、それなりに何か困っているというわけだ。コイツの助けが必要なのだろう?」
 ぽんぽーんと軽く二回、デデデは巨大なシルエットの足を叩いた。
 歩み寄り、夕日が完全に影の向こうに隠れて初めて、デデデと共にあるのが何であるのか気が付いた。
「ダイナブレイド! どうしてここに?」
「入用だと思ったからさ」
 バタバタとダイナブレイドの顔の下まで駆け寄ると、カービィは振り仰いだ。
「ダイナブレイド! 僕達、ハルバードを追い掛けないといけないんだ。でもワープスターは撃墜されちゃったし、他にハルバードを追い掛けられる乗り物がない。だから君の力を貸して欲しい! 頼まれてくれるかい?」
 承知したとばかりに、怪鳥は声高く嘶いた。

「話が盛り上がっているところ悪いが」
 静観していたデデデ大王が口を挟んだ。
「もう日が沈む。幾らダイナブレイドとはいえ、夜間の飛行は危険だろう? だから今日のところは城で休んでいけ。飯とベッドぐらいは提供してやらんこともない」
「それって……ツケ?」
「10倍返しにて手を打ってやろう」
「ちょっ!!」
 瞠目したまま言葉を失うカービィの頭を軽く叩き、デデデが踵を返した。
「冗談だ。さ、付いて来い」
 さっさと歩き出したデデデとそれに従うギム、そしてワンテンポ遅れたカービィのシルエットが城の中へと吸い込まれていった。

           ◆

 夕日の残滓が、オレンジ色のグラデーションを僅かに藍色のカンバスに残す頃――西の空を背に、戦艦ハルバードはグレープガーデンへ向けて航行している。
 人気のない倉庫の片隅で、ポピーブロスJr.と星見草が夕食を口に運んでいる。二人の目の前には餅猫から手に入れた艦内配置図が広げられており、淡い白光を放つライトが内容を写し出していた。
 喧騒と浮き足立った笑い声が絶え間なく聞こえてくる。ハルバードのクルー達はきっと、初めて過ごす空での一夜に興奮しているのだろう。
「んー……今ウチらが居るのはここやろ? 主砲は甲板に据え付けられているみたいやから、ここをこう行けば辿り着け沿うや。ん、どしたコカ。なんや冴えない顔しとるやないか」
「うう〜ん、Jr.さんに頂いたパンが美味しくないわけではないのですが〜、外から漂ってくる匂いが美味しそうだな〜と思いまして」
 ポピーブロスJr.がヒクヒクと鼻を動かし、空気を吸い込んだ。確かに、ちょっと埃っぽい空気と共に食欲をそそられる香りが混じっている。
「そうかー、ハルバードでも夕飯時なんやなぁ。てことはきっと護衛が甘くなる! コカ、今すぐ行くで! 飯の続きは後や」
「え、ええ!? は、はい〜」
 ポピーブロスJr.に倣って星見草は食べかけのパンを懐に仕舞い込んだ。そして二人は金属製の蓋を外して、薄暗い通風孔の中へと潜り込んだ。
「しっかり付いてきいや」
「だ、大丈夫です〜」
「よし、その意気や」
 左腕に救急箱を抱え込み、片腕と膝だけで一生懸命後に付いてくる相棒を時折振り返りながら、ポピーブロスJr.は頭の中に描いた地図に沿って前に進む。
 どのぐらいのコーナーを曲がったのか、星見草には既に数え切れなくなった頃、「着いたで」というポピーブロスJr.の囁きが耳朶に触れた。
 ライトを口に咥えたポピーブロスJr.が器用にドライバーを使い、はめ込まれた蓋を外す。そこから通風孔を抜けると、冷たい夜風が星見草の髪をなぶった。壁に捕まりながら立ち上がった星見草の視界には、空に瞬く無数の星が写る。眼下を覗き込めば、きっと地上に溢れる沢山の光の粒が見えることだろう。
 改めて甲板の上を見遣る。ハルバード艦内から漏れる光がぼんやりと闇を照らし出し、目の前におよそ丸いフォルムを持つ巨大な何かがあることが分かった。
「主砲……ですか〜?」
「せやな」
 ポピーブロスJr.の口調が俄かに固くなる。彼は掌大の四角い機械を取り出しボタンをいくつか押してから、目の前の闇と機械の小さなディスプレイとを交互に睨み付けた。
「な、何かあるんですか〜……」
「詳しい事はわからん。でもこれ以上近づくのは危険やと思う。あの主砲がずっと沈黙しとるかわからんし、主砲の防御システムが絶対あるはずやから」
 四角い機械の電源を切ると、今度はそれよりも少し小さな立方体の機械を取り出した。
「それは?」
「Leicaの最新型や。コカはここで待っとれ」
 はて? と怪訝な目を向ける星見草に向かって、ポピーブロスJr.はウィンクを一つすると、Leicaなる機械のボタンをカチカチ押しながら、主砲を中心に楕円を描きながら一周してきた。
「よし、ミッション一つ達成や。艦内に戻るで」
「え〜、もういいんですか?」
「ええ、それにこんなところに何時までもいたら、風邪引いてしまうわ」
「ああ〜、そうですね」
 戻った戻ったと通風孔に星見草を押し込み、外した蓋を元に戻すとポピーブロスJr.も元来た通風孔を戻っていった。

           ◆

>>ハルバードグレープガーデンに向けて進攻中。
  現在カービィはデデデ城でだらだら休憩中。

           ◆

               To be continued...

               2007Jun01 written by tate

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