tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 11: こんかいのそうどう


 バタービルディング、最上階の一室を後にしたスターリンとレモンは、番兵に見送られ螺旋階段まで戻ってきた。突然、レモンはびしりと人差し指をスターリンに突きつけた。
「スターリン! デデデ大王の手先だなんて、あたしは一言も聞いてなかったわよ!」
 空いた左手を腰に当て、仁王立ちになるレモンを見て、スターリンは溜息を付いた。
「それはお前だって同じだろう。メタナイトの使いだなんて、一言も言わなかった」
「うっ……、そっそんなこと言うわけないじゃない! 自ら素性を明かして、身を危険にさらすなんて」
「まぁ、とにかく」
 スターリンはそう前置き、天井を指差した。
「こんなところで立ち話も何だから、とりあえず外に出よう」

 スターリンがレモンを小脇に抱えたままフライトの呪文を使い、バタービルディングの外部に脱出する。そのまま、塔の入り口にふわりと着地した。
「行きはあんなに苦労したのにぃ……」
「仕方がないだろう、まさかあんなところから出入りできるなんて、部外者の僕が知っているわけがないのだから。さて、と」
 夕暮れ時の茜色の光の中、スターリンはレモンに改めて向き直った。荒野を吹き抜ける風が、スターリンのマントをはためかせる。想像以上に真剣な顔付きのスターリンに、レモンは思わず一歩引いた。
「君はメタナイトの使いだということはわかったが、何用でここまで来た?」
「そういうあんたこそ、何しに来たのよ!」
 レモンはスターリンに抱いてしまった漠然とした不安をかき消すかのごとく、必要以上に声を張り上げる。ずびしっとオーバーアクション気味に、スターリンを指差し、自分の調子を何とか取り戻そうとする。
「あのな、僕とシャインの会話を聞いていただろ。僕がここに来たのは、あの件を直接問い詰めるため、それだけだ」
「じゃあ。あたしだって、シャインから受け取る物を受け取りに来ただけよ!」
「ふむ、その受け取る物とはどういうものだ?」
「へ? えーと……それはぁ……知らない」
「何だ、知らんのか」
「知らないわよっ、メタナイト様からは言えばわかるとしか言われなかったんだもん」
 レモンは腕組みをし、ぷぅっと頬を膨らませた。ぷりぷりと怒る彼女の様子や、これまでの彼女の思考の深さを見る限り、どうやら本当に知らないのだろうとスターリンは判断する。実は彼女は頭が足りなくて、それを良いようにメタナイト達に利用されているのではないかと、一瞬邪推がスターリンの頭をよぎったが、これは飲み込んでおくことにした。
「まぁ、アレだ。レモン、君はもう少し他人を疑うことを学んだ方が良いな」
「? どういうこと?」
「……わからなければ別にいい」
「???」

 どんどんと長くなっていたバタービルディングの影が、大地と同化し始めてきた。もうすぐ日が落ちる。夜になったからどうだということは別にないが、できるだけ早く大王の下に一度戻った方が良いだろう。
「これから僕は大王の下に戻るつもりだが、レモン、君はどうする?」
「どうするって、そりゃハルバードに戻るに決まってるじゃない!」
「そうか。どうやってハルバードの座標を算出するのかまでは気にしないことにするが、テレポート失敗しないようにな」
 それじゃ、と手を上げスターリンが背中を向けようとすると、レモンに右手を捕まれた。
「な、何だ」
「ハルバードの座標がわかんない」
 スターリンの右手を掴んだまま、レモンは眉間にしわを寄せ、かつ眉尻を下げた。スターリンは、とりあえずレモンの左手を自身の右手から引き剥がし、少しレモンとの距離を縮めた。それから、自分の視線を彼女の目の高さに合わせるために、少しかがんだ。
「僕は君の保護者じゃないんだ。僕がハルバードの正確な現在位置を知っているわけがないだろう」
「そりゃそうだけどぉ」
「ハルバードの位置がわからないのなら、オレンジオーシャンの要塞でも戻ったらどうだ? あそこなら、管制官が常時詰めているだろうし、ハルバードの座標も追いかけているに違いないだろ……ぅがっ!」
 スターリンが言い終わらないうちに、レモンはぱっと目を輝かせてスターリンの首に思いっきり抱きついた。そしてぎゅむぎゅむと彼の首を絞める。レモンの頭がスターリンの顎のヒットしたが、レモンの方は特に気が付かなかったようだ。
「そっかぁ、オレンジオーシャンに戻ればいいんだ。スターリンってば頭良い〜。よーし! あたしも戻ろう、それじゃ!」
 レモンは、スターリンを解放すると目を輝かせながら彼と両手で握手をし、満面の笑みで両手を振った。そして顎を押さえながら咳き込むスターリンを尻目に、破顔したままレモンはテレポートを唱えた。
 レモンの姿が消えたのを片目に、スターリンはやれやれと立ち上がった。
「騒がしい娘だったな、できればああいうのとは赤の他人でいたかった……」
 もう一度咳き込むと、スターリンは改めてバタービルディングを仰いだ。
「ブルブルスターに迫る敵とメタナイトの蜂起……よくわからないことだらけだな」


 さて、少し時間を巻き戻そう。
 ヨーグルトヤードに向かう途中で、偶然アイアンマムを拾い、そのままずるずると行動を共にすることになったシルフィード。ようやく彼女は「こんかいのそうどう」が何を指すのか知ることとなった。

 その後、ワープスターは特に問題にぶつかる事もなく、シルフィードとアイアンマムの二人をヨーグルトヤードまで運んだ。盗賊ギルドの街、ヨーグルトヤードも日中はそれほどアングラ臭が立ち込めているわけではない。街道には屋台が並び、旅人や労働者、物好きな観光客でごった返している。屋台をよくよく覗けば、あからさまにまっとうな商売には向かないだろうという人相の悪そうな親父が店主を勤めていたり、怪しい紫色のキノコを売っていたりと、平和の代名詞ベジタブルバレーの屋台とはまったく趣向が異なるのだが、これもまた一つ、ヨーグルトヤードの醍醐味だ。
「いつものことってのはわかってるけど、相変わらず人が大勢いるなぁ」
 ワープスター停留所から、押し合い圧し合いする人の波を眺めていたシルフィードだが、そこは自称旅のカラス。慣れた様子でするすると人の波に上手く乗り、アイアンマムを引っ張りながら冒険者ギルドの前までやってきた。
「マムちゃんはこれから……ってああ!」
「ご……ゴメ……ン、私……もう……ダメっぽ…………」
 人いきれに酔ったらしく、真っ青な顔をしていたアイアンマムは、そういい残すとばったりと倒れこみ、地面に顔面からダイブした。
「あ〜あ……」
 仕方ないよね、と倒れたアイアンマムをギルド前のベンチに残し、シルフィードは広報用掲示板を見に、一人冒険者ギルドの中に入っていった。

 冒険者ギルドの中も街道の人並みに負けず劣らず、冒険者然とした人々で溢れ返っていた。毎度のことながら、プププランドのどこにこんなに冒険者がいるのだろうなぁ、とシルフィードは思う。自称旅のカラス、シルフィードは、プププランドの平均からしたら浮き足立った放蕩生活に足を突っ込んだ冒険者業に随分と傾いている人生を送っているが、それでもプププランド内で冒険者に出会うことは稀だった。謎だよね! と独り言をつぶやきながら、広報用掲示板の前までやってきた。
 求人広告からしがない壁新聞まで、雑多なチラシが雑然と貼り付けられた掲示板を、シルフィードは隅から隅までじっくりと眺める。時折、チラシをそっとめくり、新しいそれの下に埋もれた古いものにも目を通す。
 このような掲示板に、「こんかいのそうどう」のことが堂々と書いてあるわけもなく、シルフィードは毎回チェックしているプププランドの広報紙「壁新聞 レインボーリゾートの旬!」の今週の占いのコーナーを読み終えると、掲示板の前から離れた。

 シルフィードは人だかりのできている「ライセンスカード発行受付窓口」を横目に、閑古鳥の鳴いているカウンターへと歩いていく。
 プププランドの冒険者ギルドでは、「冒険者ライセンスカード」なるものを発行している。冒険者ギルドに加盟している各種店舗で、冒険者特別優遇を受けるために必要なもので、どういった経緯でそのようなブツができたのか、実のところデデデ大王も把握していない。ただ、プププランド内の物流を盛んにするというプラスの効果がかなりの成果を挙げているため、デデデ大王も上から冒険者ギルドのお茶目を押さえつけることはしていない。そして今日も「ライセンスカード発行受付窓口」には、多くの自称冒険者が押しかけている。
 当然、シルフィードは「冒険者ライセンスカード」を持っている。この「冒険者ライセンスカード」を交付してもらうためには、筆記試験と面接、そして自身のおかれている境遇が冒険者らしいと判断されないといけないわけだが、この「冒険者らしい」というのがまた曲者で、この超主観的な判断基準のせいでライセンスカードが交付されないと、苦情が殺到する始末。
「相変わらずライセンスカードは大人気だね」
「ああ、そうだなぁ」
 閑古鳥の鳴いているカウンター窓口に座るギルド員が、シルフィードに応対する。
「でもあいつら、ライセンスカードが冒険者ギルド内でしか通用しないってこと、わかってないだろなぁ。このことをもっと前面に押し出せば、なんとなく交付申請をするやつも減ると思うんだがなぁ。ところで、今日は何の用だ?」
「ん、実はですねぇ」
 シルフィードは、現在プププランドを騒がせている騒動とやらが何なのか、それについて調査をしている旨を簡単にギルド員に伝えた。
「おい、今プププランドを騒がせてるアレつーたら、ブルータスんとこのハルバードがプププランド制圧のために発進したことだろ」
「げげっ! マジで?」
「ああ、オレンジオーシャンの方角を遠眼鏡でくまなく探せば、すぐに見つかると思うぜ。しかし、ブルータスもここに来て何故ハルバードを出してくるかな。さっぱりわからん」
 海賊団ブルータスの脅威は、別に今回の蜂起に始まった話ではない。オレンジオーシャンに面する物々しい外見の要塞、その要塞にはいくつもの砲座とひときわ目立つ主砲。これらの目に見える装備の他に、裏では強力な破壊兵器の密売も手掛けており、さらに情報操作によりそれらの事実を隠蔽していると、尾ひれ背びれにたっぷりと脂まで載った噂を、プププランドの人々は頭から信じ込んでいる。かの海賊団ブルータス見学ツアーなんかも存在する、オレンジオーシャンの目玉である彼らは、そこにいて活動をしているという事実だけで威嚇になるのに何で具体的なアクションを起こすかなぁ、わけわからんというのが、ギルド員の話だった。
「具体的なアクションを起こすのは何かまずい?」
「万が一、あっさりやられちまったりしたら、これまでのイメージが総崩れだろ」
「あ、なーるほど!」
「ま、オレの与太話はこんなもんだ。オレの与太以上の詳しい話は入ってこないぜ。申し訳ないが、冒険者ギルドで扱う範疇外の出来事ってこった」
「そっかぁ。どこに行ったらブルータスの蜂起の情報って手に入るかな」
「そうだなぁ、今回の蜂起の件はブロントバートに聞くといいだろう。ヤツがブルータスの広報担当から、直に情報をリークされたらしいからな」
「広報担当から直に?」
「ああ、そうらしい。突然ヤツの元に乗り込んできて、ブルータスが遂にプププランドの制圧に乗り出したという情報を流していったらしい」
「へぇ〜。やっぱりかの海賊団にも、広報担当とか色々な役割があるのね」
 ギルドの窓口担当が「直に情報をリークしてきた」ことを強調する一方で、シルフィードの頭には、「広報担当」という妙に平和的な肩書きだけが焼きついた。
「アンバランスなのもかっこいいのよね!」
「……はぁ? もし、ブロントバートに直接当たるのなら、グレープガーデンのラジオ局を訪ねるといい。最近ヤツは、グレープガーデンに詰めていることが多いらしいからな」
「そっか、有難う!」
 シルフィードは情報料としてコインを3枚、窓口担当の手の中に滑り込ませると、ペコリと頭を下げギルドを後にした。

 表のベンチにおいてきたアイアンマムの様子はどうだろう、とシルフィードが表口に回ると、そこには誰もいなかった。
「あ、あれれ……」
 空のベンチを目の前に、ポリポリと頭を掻く。アイアンマムの姿がないかとしばらくあたりを見回して見たが、目立つ金髪のお下げ頭は特に見つからない。まぁいっか、とシルフィードは単身グレープガーデンに向かうことにした。


>>ハルバードグレープガーデンに向けて進攻中。
  現在カービィはダイナブレイドと合流すべく移動中。


To be continued...

2004Feb13 written by A.Tateshina
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