tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 09: 群がる者達


 シルフィードはポケットからハンカチを取り出し、自分の膝の上に頭を乗せる女性の顔に付く泥を拭きとった。それから気を失っている女性の体を引きずり、ワープスターの最後尾の座席に座った。彼女らを取り囲んで様子を伺っていた乗客も、おのおの座席に収まった。
「それでは出発します」
 ドライバーのアナウンスと共に、ワープスターは走り出した。

 自分にもたれ掛かっている未だ意識が戻らない女性を横に、シルフィードは腕を組んだ。
 なんとなく勢いだけで助けちゃったけど、これからどうしよう…ヨーグルトヤードまではまだ時間が掛かるから、その間に目を覚ましてくれるといいんだけどなぁ。うむむ…
 そんなシルフィードの願いが通じたのか、おもむろに女性が目を覚ました。ばっと上半身を起こして、イテテテテと後頭部を手で押さえた。
「あれ? ここは……」
「ワープスター発着所に倒れてたんで、勝手に回収させてもらっちゃいました。まずかったですか?」
「倒れてた? 私が? おかしいな、カービィと戦ってたはずなのに……は! もしや私に怖れをなして逃げたのね! 卑怯なりカービィ!!」
 拳を振り上げ、独り言を力弁するアイアンマム。シルフィードは突っ込みをいれようと思って、でもやっぱりやめた。
「触らぬ神に祟りなしってやつよね」
「何?」
「な、何でもないよ」

 ところで、とシルフィードが切り出した。
「私、これからヨーグルトヤードに行くけど、貴女はどうする?」
「ヨーグルトヤードかぁ、ギルドにでも立ち寄るの?」
「うん、そう。なにやら今、事件が起こってるらしいからそれについて調べるんだ。デデデ大王直々の命令だからね、気合入れて調べないと! 今起こってる有名な事件って、何かわかる?」
 シルフィードはアイアンマムに尋ねてみる。アイアンマムは首をかしげた。
「有名な事件…?さぁ、なんだろ。私は知らないなぁ。で、話戻すけどギルドに行くのなら、私も一緒に行っていいかな?」
「もちろん」
 私の名前はシルフィードって言うんだよろしくね、とシルフィードは笑顔で右手を差し出した。


「業務連絡だ。みらまた及びふぇあの二人は至急、ブリッジまで直通回線にて連絡を入れるべし。繰り返す。みらまた及びふぇあの二人は、至急……」

 アックスナイトの声でハルバード艦内放送が入る。仕事をさぼり、キャットウォークでのんびりしていたみらまた、ふぇあの両人は慌てて自身らの持ち場に戻り、最寄の端末からブリッジへの通話回線を開いた。いや、開こうとした。
 ボタンを押そうとしたみらまたは、ふと手を止めてポケットから几帳面に折りたたまれた紙を取り出した。丁寧にそれを広げて、一番上から目を通す。
「え、えーと……コレをこう押して……」
 ぷるぷると震える指で、先ほど取り出した紙…これが端末使用手順書であるわけだが、それに従いボタンをぽちぽちと押した。慣れない手つきでおっかなびっくりボタンを押すと、突然、端末コンソールにアックスナイトの顔が映っているポップアップウィンドウが開いた。
「何か用か?」
 みらまたの背中越しに端末画面を眺めていたふぇあが、あくびをしながらコンソールの中のアックスナイトに話しかけた。コンソールウィンドウの中のアックスナイトは、ぴくりと眉を動かし頬を引きつらせた。握り拳を作ったのが画面の端に見えたが、みらまたはこの際、気にしないことにした。
「ああ。本艦内部に、外部からの侵入者の存在を発見した。お前たち、みらまたとふぇあの二人でこいつを追い詰め、艦外放り出せ、これが仕事だ。お前たちのターゲットとなる人物の映像を転送しよう。監視カメラで捕らえたものだから、あまり鮮明ではないが、人物の同定には使えるだろう。何かあったらブリッジに連絡してくれ」
 こちらの反論する余地も与えられずに、アックスナイトとの通信はぷつんと一方的に切られた。

「あ、切れた。ったくよー、なんであいつはあんなに偉そうなんだ?」
 ブツブツと文句を言いながら、二人は "Now Downloading..." というプログレスバーが点滅するコンソールを眺める。バーが 100% に達すると、先程アックスナイトの顔が収まっていたのと同じウィンドウが1つ、ポンと開いた。そこには、精悍な顔立ちをしていると思しき青年が一人、写っていた。無理やり拡大したのだろう、ノイズが入りまくった目の粗い画像だった。みらまたはあれ? と一瞬怪訝な表情を浮かべ、じっとモニターに写るその顔を凝視した。
 こいつって……
「んー? なんだこりゃ。こんなに汚い画像じゃ、人物の特定なんてできないぜ」
 ふぇあがノイズだらけの写真に文句を言う。彼はやる気なさそうに頭の後ろで両手を組み、一つ欠伸をした。
「いや、こいつなら知ってるから大丈夫だ」
 みらまたが答えた。
 彼曰く、アックスナイトが送りつけてきた写真の青年は、カーヴィという名前だそうだ。見た目は和風侍だが、剣を持って戦うのはからきしダメで、どちらかというと魔術の方が得意とのこと。
「懐かしいなぁ。こいつとオレさ、アイスクリームアイランドにある孤児院で一緒に育ったんだよ。カーヴィのヤツとは、孤児院を出て以来連絡を取ってなかったからなぁ」
アイスクリームアイランドの海岸でよく遊んだんだぜー、よく砂浜に埋めて泣かせたなぁ……何にせよ、生きてて良かったよ、とみらまたは思い出に浸りながらべらべらと喋った。
 彼がふと我に返って後ろを振り向くと、壁にもたれかかって船を漕いでいるふぇあの姿があった。みらまたは無言でふぇあにパンチを一発、お見舞いした。


 餅猫とメイスナイトは、二人仲良く展望台に上ってきた。ここからだと、ハルバードの鈍い金属光の向こう、眼下いっぱいにプププランドの町並みが見える。
「いつ来てもここは眺めがいいね」
「だスなぁ。そういえばこの間の嵐の時、ハルバードで雷雲に突っ込んだはずなのに、傷がついた様子もないだスな。丈夫だスなぁ」
 メイスナイトは手摺につかまり、ハルバードの腹をコンコンと拳骨で叩く。
「ん? アックスナイトがぶつくさ文句言いながら修理してたよ、あの後」
「あり、そうだっただスか。むー、やっぱりメカニックの人手が圧倒的に足りないだスよ、うちは。こんなでかい船を維持するのも一苦労だス。さて、と。結界を張るだスか」
 そう言うと、メイスナイトは懐からチョークを取り出し、展望台の四隅に方陣をカツカツと描き始めた。
「メイスっちん、魔法障壁なんて張っちゃっていいのかな?ハルバードに乗ってるみんなは……いざという時、どうやって脱出するの?」
 餅猫の言葉に、メイスナイトが顔を上げた。
「大丈夫だスよ。脱出用の小型飛行機がハルバードには積まれてるだス。ちゃんとクルーみんなの頭数考慮した上で搭載されてるから、心配いらないだスよ。それに私の張る結界なんて、レベル的にも高が知れてるだスから、ザコ避け程度にしかならないだス」
「私も一緒にシールド張ろっか?」
「んー、私一人で大丈夫だスよ、とちった時にはサポートお願いしますだス」
 ぺこりとメイスナイトが頭を下げた。餅猫はぴっと親指を立てた。
「リョーカイ」
 餅猫は展望台の端まで下がり、手摺に寄りかかった。ふと足元を見ると、主砲の近くにメタナイトが立っている様子が見えた。主砲のコントロールコンソールルームの方に顔を向け、何かを話しているみたいだ。メタナイトの声は風の音にかき消され、餅猫の耳にまでは届かなかった。
 手摺に肘を付き、眼下のメタナイトをぼーっと眺める。

 うん、やっぱりいつ見てもメタナイト様はかっこいい!

 ふと背後に魔力の流れを感じて、餅猫は振り向いた。メイスナイトが両手をかざし、展望台のほぼ中央に立っているのが見えた。呪文の詠唱を始めているらしい。ばさばさと風に煽られ、丈の短めのスカートの裾から日に焼けた健康的な腿が覗いた。

 ビュウ!!

 詠唱を終え精神を集中したメイスナイトに突風が突然吹きつける。突風に煽られたメイスナイトはバランスを崩し、その場にすっこけた。
そして、ぽぅん、と一瞬ハルバード全体が淡い乳白色の光に包まれたが、光はすぐに消えた。

「メイスっち!大丈夫?」
遠くから眺めていた餅猫が慌てて駆け寄る。
「大丈夫だス。ふへー、急に風が吹いてくるなんて、聴いてないだスよ!もう!!」
「シールドは?」
心配そうに尋ねる餅猫の顔を見上げ、メイスナイトはえへへと笑った。
「ふぃ、何とか上手く行っただス。すっこける直前に完成してよかっただスよ。
 じゃ、私は下のサポートに戻るだス。餅ちゃんは?」
「私はしばらく風に当たってくよ。そんなにやることもないだろうしね」
それじゃお先に、とメイスナイトはブリッジに降りる梯子に足をかけた。その時、ハルバードに向かって急行する光が一つ、メイスの目の端に止まった。


「カービィが飛んできますっ!!」
アックスナイトの前に並ぶコンソールに、突然耳障りなビープ音と共にアラートウィンドウが画面いっぱいに上がった。ビービーと悲鳴を上げるコンソールを睨みつけ、アックスナイトはキーボードを叩きつけた。ピピッという音が、右側のコンソールから鳴る。ジャベリンナイトからの割り込み画面が表示された。
「主砲準備完了、いつでもいけます」
「…一発いってみるだスか?」
いつの間にやら展望台から戻ってきたメイスナイトが、にんまり笑い楽しそうにつぶやく。
「よーし、どかーんといけ!どっかーーーんと!!」
司令官はゲハゲハと豪快に笑う。
「ん、じゃあいくだスよ、ジャベリンナイト。主砲を発射するだス!」
「アイアイサー」
メイスナイトの言葉を受け、ジャベリンナイトは主砲コントロール用コンソールに備えられている、アナウンスボタンをぽちっと押した。

『これよりハルバード主砲による清射を行います。甲板付近にいるものは15秒以内に退避されたし。繰り返します。これより……』

 甲板上に待機していたクルーたちが、いそいそと艦内に駆け込んでいく姿が見えた。
「メタナイト様もこちらへ!」
主砲のすぐ脇に立つリーダーに、ジャベリンナイトが声をかけた。メタナイトは彼を一瞥しただけで、すぐに正面の空に視線を移した。
「いや、俺はここでいい」
メタナイトは主砲を支えるアームの一つに手を掛け、空いた片方の手を腰に当てた。彼の長めの髪とマントが、ばたばたとなびいている。
「了解です」
ジャベリンナイトはマイクを取り、ブリッジとの回線を開いた。
「こちらの準備は完了した。いつでも発射できます」

「リョーカイ!ではいくだス。
 3・2・1・オンファイアー!!」
メイスナイトが発射ボタンを押した。

 メタナイトの頭上をビームの束が走る。マントが千切れんばかりに後ろに流された。額があらわになった彼の顔が、ビームの光に照らし出される。眉間にしわを寄せ、前方を睨みつけている。アームを握る手に思わず力が入る。風圧で吹き飛ばされないように、反射的に足を踏ん張った。
先程までハルバードを追跡していたワープスターは、ビームの直撃を受け、そのままふらふらとオレンジオーシャンの海に落ちていった。

 瞬間的に走る閃光に気がついたぜぼしんは、反射的にキャノピーに張り付いた。淡い光の残滓しか見えなかったが、黒い煙を吐きながら落ちていくワープスターを見た。
主砲か、なるほど。たいした威力だな。エネルギーレベルの計測ができなかったことが、遺憾だった。
「さてさて、な〜ビィ嬢と再び合流しなければな」
ぜぼしんは目を細め、くつくつと笑いを漏らした。

 ハガカは、唸りを上げる主砲をキャットウォークから眺めていた。規模こそは小さけれど、確かにあれは自分の星の防衛ラインで採用されていたものと同じ物だ。軍事技術が盗まれていたことに、今更怒りは感じない。むしろ、データだけでここまで再現させることができるブルータスの技術力に、内心感嘆のため息を漏らす。
やはり利用しない手はない。彼には、早いところケリをつけてもらいたいものだ。


「な、何や!?今のは…」
すぐ脇を稲妻が走ったかのような閃光に、ポピーブロスJr.が眉をひそめた。窓に駆け寄り外の様子を伺うと、黒い煙をたなびかせ何かがゆらゆらと落ちていく様が見えた。星見草も背伸びをして、ポピーブロスJr.の肩越しに窓の外を覗く。
「何だったんでしょうか〜。でもあの落ちていくアレ、ワープスターみたいですねぇ。てことは、砲撃されたってことですか。されたというか、正確にはこの船がワープスターを砲撃した、というか」
「そやろな。ワープスターなんざ、戦艦に砲撃されれば一たまりもないやろな。どっちかつと、今どんなタイプの砲撃をしたかの方が気になるなぁ。何だったんや、あの光は……ちとその辺調べてみたい。砲座の場所は、えっと…」
ポピーブロスJr.は艦内見取り図を捲り、砲座を探す。星見草も見取り図を覗き込む。
「艦底部にあるみたいやな」
「あれ、でも主砲は甲板に据え付けられてますね」
星見草が見取り図上の主砲を指差した。
「主砲か…見に行ってみるかな」
そう言い、ポピーブロスJr.は見取り図を折りたたみ、懐に突っ込んだ。

「うわー、すごーい。すごいですね!メタナイト様!!」
頭上から女の声が降ってきた。見上げると、展望台から餅猫が身を乗り出している姿が見えた。メタナイトが怒鳴る。
「落ちるなよ」
吹き付ける強風にあおられ、餅猫は落ちそうになる。あわわっと手をばたばたさせてバランスを取る。すぐに顔を引っ込めた。それから「だいじょーぶでーす」という彼女の声が聞こえた。ふふっと笑い、メタナイトは甲板に飛び降りた。


>>ハルバードグレープガーデンに向けて進攻中。
  現在カービィは壊れたワープスターの運ちゃんを慰め中。


To be continued...

2003Aug31 written by A.Tateshina
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