tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:サイドストーリー】Zapping of 06: 黄昏の塔


―――――バタービルディング…

カツン

スターリンの持つカンテラに小石があたった。
彼の頭上から降ってきたらしい。

疑問に思ったスターリンが頭上を仰ぐ。
もともと暗い塔内で、見通しは悪い。しかし、明らかに大きな質量を持った物体が高速で落ちてくるのを感じ取ることができた。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

女の声だ。
どういうわけかは知らないが、女が上から降ってくる。
スターリンの顔がこわばった。

 う、受け止めるべきなのだろうか…

そうこうしているうちに、空から落ちてきた女性がスターリンの真上に見えた。
手を伸ばした瞬間、
彼女の体は重力に逆らうように急激に減速した。
さながら、宇宙船が逆噴射をするように、だ。反射的に、女性が魔法を使ったらしい。
しかし、ベクトルまでは変更できなかったのか、彼女はそのままスターリンの上に落ちた。

「うわっ!」
足場の悪い階段で、必然的に2人分の体重を支えざるをえなくなったスターリンは、腕をばたばたさせてバランスをとった。魔術で自分の上にいる人間を支えれば、なんてことはないのだが、やはりシャインのブービートラップは気になる。
意地でも、彼は魔術を使わなかった。

「う゛〜…」
「早くどけ」
スターリンの上に乗っかってた女性は、もそもそと床に降りた。
その女性…まだ少女と形容するのがふさわしい年頃に見える…は、ずるずるの長いローブを身にまとい、手には分厚い書籍を持っている。
自分と同じく、魔術を操る者のようだ。
「お前、名前は?」
「にゅ?
 レモンってんだけど…あなたは?」
スターリンは、レモンと名乗った少女をじとっとねめつけた。
レモンはばたばたとローブの裾をはたいている。どこから落ちてきたのか皆目見当もつかないが、その途中で拾ってしまった蜘蛛の巣やら埃やらが舞い上がった。
「テレポートに失敗したのか。
 よかったな、出現先が石の中じゃなくて」


もともと、テレポートの魔法はあまり得意じゃなかった。
テレポート、というよりも魔法自体があまり得意じゃない。書物を読み漁り、いろいろな文献を読んで魔術を学んできた。1つ新しい魔術を知るたびに、試行を繰り返してきた。しかし、自分の力だけで成功したことは一度もない。
魔法陣を念入りに描き、月のエナジー周期を考慮して初めて成功する。
自分は、魔法使いとしての素質がないのではなかろうか?
メタナイトの元で働き始めてから、その考えはますます強くなった。メタ・ナイツには魔術を行使するものが少なからずいる。メイスナイトや、自分とも仲のいい餅猫、ほかにも名前は知らないが魔術師と思える人物がいる。
そのすべてが、自分とは違う次元で魔術と向き合っているように見えた。

実は、かなりへこんでいる。
ぜんぜん自分はダメで、いい加減魔術の道はあきらめたほうがいいのかもしれない。
今もこうして、テレポートに失敗してとんでもない空中に放り出されてしまった。

 …ん?

「あんた!
 何で私がテレポート使ったことがわかったのよ!
 それに、石の中に出現するって…ひょっとして、同業者?」
暗くてよくわからなかったが、自分が落ちた先には人がいたらしい。
しかも、自分と同じ魔術師らしい。人には名乗るだけ名乗らせて、こちらの質問をはぐらかすような、い〜か〜に〜も〜魔術師然とした人物のようだ。
「同業者…だろうな。
 さて、お前はここに何しに来たんだ?」
その魔術師は、ちょっといけ好かないやつらしい。
話し方が高圧的だ。
「この塔のてっぺんに用事があるの!それだけ」
「…ということは、僕と目的地は同じか…」

 む?

短めの黒髪の男は、ふむ、とぼやいた。

 むむ…
 この人…ちょっといい男かも♪
 ちょっと顔が好みも…☆

「目的地が同じなんだね、じゃあ一緒に行こうよ」
「…
 そうだな、2人のほうが生存率も上がるしな」
なにやら目の前の男は物騒なことをぼやいている。
とにかく、即席パーティーの出来上がりなのは確からしい。
「じゃあ行きましょ!」
レモンは、相手の男の手をひっぱり、元気よく階段を登りだした。
黒髪の男は、気の乗らなさそうな顔を一瞬したが、何も言わずにそのままレモンに引っ張られるように歩き出した。

「ねぇ、もう一度聞くけど。
 あんたの名前は?」
「スターリンだ」
「そ、よろしくね、スターリン」


ハルバードでは、急速に離陸の準備が進んでいた。

「本艦、離陸まで後3分――」

全館にアナウンスが入る。

ちょうどその頃、プププランドの英雄、カービィが即席ヘルパーのギムと共に甲板に立っていた。
「もうすぐ離陸するみたいだね。
 早いとこ、艦内にもぐりこんでおこう」
カービィが辺りを見回した。
艦内へと続くであろう扉が目の前に一つ見える。
よし!と、カービィがそちらに進もうと足を踏み出したところへ、突然声がかけられた。

「ここから先へは進ませないよ!」

反射的にカービィが声の飛んできた方向を振り向く。ギムも視線をそちらへやる。
彼の視界の先には、青と黄色が入り混じった不思議な光彩を放つ宝玉が埋め込まれたスタッフを持つ女が一人、立っていた。
腰に手を当てて、びしっ!とスタッフをこちらに向けている。


「なっ
 何じゃ!誰じゃ!あの虚け者は!!」
ハルバードのブリッジ、メインスクリーンにはカービィと対峙している戦闘員が映し出されている。思わずメイスナイトがマイクを取る。
「ダメだスよ〜!!早く離陸に備えて艦内に戻るだスよ!!」
メイスの必死の声も、どうやらカービィに対峙する女には届いていないらしい。
ワドルディもあわあわとした表情で、手のひらを握り締めている。
「な〜ビィさーん!!何してるだスか〜!!」


「カービィ!ひとまずここは私があなたを撃退してみせるよ!!
 覚悟はいい?」
えーと…といった、困った表情を浮かべるカービィは、やる気満々な女性…どうやら、な〜ビィという名前らしい…、そして離陸が近いという事実に板ばさみになっていた。
「くそ〜!こうなったらまず君を倒して…」

どーーーーん!!

轟音と共に、突然黄金のロブスターが甲板に躍り出た。
「あれは、ヘビーロブスター…」
な〜ビィの存在を無視するかのように、ヘビーロブスターはカービィたちに襲い掛かった。それに応戦するカービィたち。一人置いていかれたな〜ビィは、これまでのやる気を向ける場所もなくぼんやりとその様子を見ていた。

カービィたちの軽いフットワークに翻弄されたヘビーロブスターが、ハルバードに積荷に突っ込んだ頃…
「離陸用意!」
アナウンスが入る。
そこでな〜ビィは我に返った。

 やば!このままだと私までふきとばされちゃ…

「3・2・1・テイクオフ。離陸!!」

まず、カービィたちが風圧に飛ばされていくのが見えた。
続いて、ヘビーロブスターが突っ込んだ積荷が飛び散る様子が見えた。
そして、な〜ビィ自身の体が浮くのを感じた瞬間、誰かが自分の腕をつかんだ。
ハルバードの方に引き寄せようとする力と、風圧でハルバードから引きはがされようとする力で体が切れそうになった。
腕が痛い。
思わず目をつぶる。


離陸による加速が落ち着いた頃、な〜ビィの体は無理やりハルバード艦内に引き上げられた。どうやら、窓枠をぶち破った誰かが自分を飛ばされないようにつかんでてくれたようだ。
ハルバード艦内で、ひとしき自身の体に怪我がないかを確かめた後、自分を引っ張りこんでくれた相手を確認する。
「ぜ、ぜぼしんさん!何してるんですか、ここで…」
「それはこっちの台詞だよ、もう少しで死ぬところだったんだぞ」
自分を助けてくれたのは、厨房付近に配置されていたはずのぜぼしんだった。
「と、とにかく助けてくれてありがとう」
片側の口元だけを吊り上げてにやっと笑ったあと、ぜぼしんは手をひらひらと振りながらハルバード下部へと降りていった。

「助けてもらっちゃった…」


>>ハルバード離陸。
  現在カービィはオレンジオーシャンの海に落下中。


To be continued...

2002May02 written by A.Tateshina
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