tateさんの小説

【メタナイトの逆襲:メインストーリー】Chapter08: Metaknight


メタ・ナイツが駆け出していった後、メタナイトはブリッジのモニターを1つだけ残し、オフにした。残されたモニターには、甲板の様子が映し出されている。
艦にはもはや推進力は無い。墜落を防ぐための浮力を得ることにすべてのエネルギーを回しているのだ。
しかし、高度は徐々に下がる。重力には逆らいきれない。

左ウィングが光を放つ。爆発により火の手が上がった。消火を行うクルー無き今、ハルバードは炎にその身を侵食され尽くすのを待つのみだ。

艦各部の爆発により、ブリッジの中が写し出される。思いつめた顔で立ち尽くすワドルディと、少し離れた所に腕を組んでモニターにもたれかかっているメタナイトがいる。メタナイトは硬い表情でうつむいている。

メタ・ナイツが出て行ってから数分後、メタナイトが不意に顔を上げた。
「ワドルディ、お前はこの間から脱出しろ。
 これは、命令だ」
強めの口調で言う。ワドルディはメタナイトのほうに顔を向ける。今にも泣き出しそうな表情だ。
「ヤです、僕は行きません」
ワドルディは頑固に首を横に振る。
「…メタ・ナイツが落ちた。直にカービィが来る」
メタナイトはそこで一度言葉を切る。
ワドルディを一瞥し、言葉を続ける。
「ここから先の行動は、お前の意思を尊重する。
 …脱出用ハッチがどこにあるかは知っているな?」
メタナイトの言葉に、ワドルディはうなずいた。

メタナイトの背中をボーっと見送ってから、直にブリッジに来訪者が現れた。振り向くまでも無い、カービィとギムがやってきたのだ、メタ・ナイツを倒して。
「あ?ディ、こんなとこで何してんの?」
あっけらかんとしたカービィの声が、ワドルディの耳に飛び込んできた。その声を聞いてたら無性に腹が立ってきた。勢いよくワドルディは振り向いた。すぐ後ろにカービィは立っていた。
ワドルディの鬼気迫る雰囲気を感じ、カービィは少し後ずさった。
「…ワドルディ?」
きっ、と彼なりにカービィを睨み付けた。
「何でそんなにカービィは能天気なんだよ!
 プププランドは重大な危機を目の前にしてるんだよ?!
 それを何とかしようとしてるメタナイトの邪魔することないじゃないか!」


ワドルディが激しく怒ってる…
でもなんでだろ…???

ハルバードのブリッジにたどり着くと、そこにはワドルディが一人、ぽつねんと立っていた。振り向き様に彼はカービィを非難し始めた。
確かに、カービィはメタナイトのすることなすこと片っ端から邪魔をしてきた形にはなっている。でもだからといって、なぜワドルディがここに一人いて、一人で怒っているのかカービィには理解できなかった。
首をかしげるカービィの後ろから、ギムがワドルディに話し掛けた。
「あなたはメタナイトのことを崇拝しているのですね」
突然そんなことを言われたワドルディは驚いたような顔をして、うつむいた。
「尊敬できる人がいるということは、良いことですよ。
 ただ、状況はあなたが考えているほど簡単ではありませんが」
ギムは相変わらず淡々とした喋り方をする。

ワドルディの表情が和らいだのを見て、カービィはすかさず尋ねる。
「メタナイトは…どこだ?」

ワドルディは無言で外を指差した。
「…外?」
「うん、きっと甲板の上だよ。
 そこのキャノピーから出てった」
「キャノピーから…」
カービィはキャノピーの方を見つめる。ウィングからの爆風が届いているはずだが、キャノピーは原形を保っている。
「メタナイトは外に?」
「うん」
ギムの言葉にワドルディはこっくりとうなずいた。

カービィがキャノピーをこじ開け、上半身を外に出す。
左手に、甲板に出られるようにはしごがかけてある。もう少し身を乗り出す。甲板の方は煙に巻かれていて、人の姿どころか、甲板にあるであろう2連主砲のシルエットすら見えない。
カービィは腕を伸ばし、はしごを上っていった。

姿の見えなくなったカービィを追うように、ギムもキャノピーに手をかける。振り向くと、ワドルディがくっついてきている。
「ぼくも行くからね!」
「…」
ギムに頭のてっぺんからつま先まで観察されて、ワドルディは慌ててパタパタと手を振る。
「気にしなくていいよ。それに、そこまで運動神経切れてないから大丈夫だって」
弁解するワドルディをよそに、ギムはワドルディを先に甲板へと押しやった。
コントロールパネルが青い光を放っている。主制御装置が生きていることを確認し、ギムも甲板へと上っていった。


実際に甲板に上がってしまうと、火の手や煙はさほどひどくない。風も思ったより吹き付けていない。これは、ハルバード自身の推進力がなくなったからだろうか?
思っていたより視界が開けている。
目指す人物、メタナイトをすぐに視界に捕らえることができた。
メタナイトはこちらに背を向ける形で立っていた。カービィの気配は感じ取っているはずだが、振り向かない。彼の羽織っている漆黒のマントと、長めの黒髪が風に煽られて揺れている。
カービィが身構えたところに、ギムとワドルディもやってきた。
「時間がありません。
 メタナイト、勝負です」
ギムが言葉を発する。
カービィはギムを手で制し、メタナイトに向かって言った。
「メタナイト!
 僕とサシで勝負だ!!」

カービィの言葉に、メタナイトはゆっくりと振り向いた。
カービィはドキッとした。

…メタナイトって こんなにぎすぎすとした雰囲気の人間だったっけ…

以前、ナイトメアと名乗る悪夢がプププランドに出現した際、カービィを影ながら支援してくれたのがメタナイトだった、とカービィは今でも信じている。しかし、今、目の前にいるメタナイトを見る限り、そのようなかけらはまったくない。
そういえば、素顔を見るのも初めてだった。
人々が噂している通り、非常に冷血漢であるという印象を与える風貌をしている。一言、わかりやすく言うと「こわい」タイプの人間だと、カービィは思った。

メタナイトは無言で腰から下げていた剣を引き抜いた。剣の他に、「短銃」をメタナイトは身に付けている。メタナイトは、銃は使う気がないようだ。

「ゆくぞ」
メタナイトはマントを後方に振り払うと、いきなり跳んだ。一瞬にしてカービィの間合いに飛び込んでくる。
「ぐっ!」
甲板に対し水平に薙ぎ払われたメタナイトの剣を、カービィは自前の短剣でかろうじて受け流した。思わずよろけたカービィに対し、メタナイトは容赦せず剣を振りかぶる。カービィは後方に飛び、メタナイトの剣先をかわす。
カービィは額の汗をぬぐい、体勢を立て直す。視線を上げ、メタナイトを視界に捕らえる。自分と相対峙している相手が再び剣を構えるのが見える。
一気に彼は自分との間合いを詰めてきた。そして剣を水平に振る。後ずさりしながら、剣先を交わしながら攻撃のチャンスを待つ。

 やっぱりレベルが違う…

自分と相手のレベルの差は予想していたが、ここまで違うとは思っていなかった。正直、カービィはメタナイトに勝てるとは思えなかった。
かつて、夢の泉の事件のときも、メタナイトと闘ったことはある。でもあの時は、決着がつく前にメタナイトのほうが退いてしまったのだった。

これ以上カービィが後退できないところまできたとき、メタナイトは初めて剣を頭上に振りかぶった。一瞬生じた隙を見逃さずに、反撃に移る。一気にメタナイトの懐に入り込む。短剣の柄を相手のみぞおちにいれる。

が、

気が付いたときには手に持っていた短剣ははじき落とされ、足払いを食らわされた。カービィは思いっきりすっこけた。
そしてメタナイトは無言で甲板に這いつくばるカービィに剣先を向けた。

「…こんなものか…」
ぽつりとつぶやいたメタナイトの言葉がカービィの耳にも届いた。どういうことだろう?と、考える間もなくメタナイトが背を向けていた2連主砲が爆発した。メタナイトは瞬間的に振り向き、爆発の規模を確認する。それからカービィを引っ張り起こし、ワドルディに向かって叫んだ。
「まずい、今すぐ脱出するぞ!!」
メタナイトはこっちへ来いというジェスチャーをしている。それを見たワドルディはわたわたっと慌てたそぶりを見せ、ギムに何か話し掛けた。
カービィが立ち上がったのを見て、メタナイトは甲板の縁にワイヤーフックを引っ掛ける。ぐいぐいと引っ張って外れないことを確認している。ワドルディとギムが駆け寄ってきた。カービィも来た。
メタナイトは黒いレザーの手袋を左手にはめた。
「先ほどの爆発の影響で、おそらくブリッジから艦内には入れないと思う。
 だから外壁を伝って艦底部まで行く。
 ギムはディを抱えて降りてくれ。
 いいか?」
メタナイトはギムに滑車付きの金具を手渡した。ギムは無言で受け取り、ワイヤーに取り付けた。そして、心配そうな顔をするワドルディを脇に抱え、するすると降りていった。

「ねぇ、メタナイト」
カービィの声にメタナイトは振り向いた。
「もしかして、僕があまりに弱いからがっかりした?」
メタナイトはしばらくそのままカービィのほうを向いていたが、何も言わなかった。カービィもそれっきり、何も言わなかった。


ギムとワドルディは艦底部のキャットウォークに降り立った。辺り一面から火の手が上がっているのが見える。ワドルディは身を乗り出し、甲板の方を見上げた。まもなく、カービィとメタナイトがすごい勢いで降りてきた。
メタナイトはうまく勢いを殺し、ワドルディ達の目の前に着地した。
二人が無事に降り立ったのを確認して、ギムは脱出用ハッチに向かって走り出した。なんとなく、カービィがさえない顔をしているのが気になったが、メタナイトに促されてワドルディも駆け出した。
「急げ、ここまで来てハルバードと心中は嫌だろう?」
カービィに向かって話し掛けるメタナイトの声が背後から聞こえてきた。

脱出用ハッチにたどり着いた。ずいぶんと火の手が回っている。メタナイトは中にどんどん入っていって、使えそうな飛行機を探し始めた。
「ねぇ、カービィ。なんかあったの?」
ワドルディがカービィの顔を覗き込んだ。
「ん、いやぁ…僕ってダメだなぁ、と思って…」
「メタナイトになんか言われたのぉ?」
「何も言われなかった…」
メタナイトが手招きしている姿が見えた。左手奥の方に使える飛行機が残っていたらしい。早くしろと言っているようだ。
メタナイトの指差す方向に急ぐ3人。ギムが通りかかったとき、メタナイトは彼を捕まえて小声で何か囁いた。ギムは1回うなずいてカービィ達の方へやってきた。
カービィがギムの方を向いたとき、後ろにいるはずのメタナイトが見えなかった。そのことを疑問に思う間もなく、脱出用の飛行機に押し込まれた。そして飛行機はメタナイトを乗せないままハルバードを飛び出した。
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