ハガネカービィさんの小説

【お題小説参加作品】[被り物]参上!スカーフィ仮面


(念のため補足:バルビィは星のカービィWiiから登場した、球根のような姿の敵です。リーフをコピーできます。)


 地平線の果てまで続く砂漠に、点在する遺跡群、そして吹き出す砂の噴水。壮大な景観で知られるここレーズンルインズでは、今日もワドルディ達が元気良くヌラフから振り落とされています。
 そんな広大な砂漠の中、この土地では唯一水が湧き出ているオアシスを、一人のブルームハッターが歩いていました。
「まったく、カービィさんも冒険するのは結構ですけど、もう少し大人しく動けないモノなのですかねぇ」
 ブルームハッターはぶつぶつと呟きながら、オアシスと砂漠の境界までやってきます。そして愛用の箒を構えると、足下の砂を掃き始めました。
「せっかく綺麗に整えた砂がぐちゃぐちゃじゃないですか」
 オアシスの若干固い地面の上から、一掃き、また一掃きと、丁寧に砂を砂漠の方へ掻き出していきます。砂漠の砂に対して一本の箒で抗うその光景は、端から見るとまさに焼け石に……いえ、きっとそこには彼なりの想いがあるのでしょうから野暮なツッコミは無しといたしましょう。とりあえずカービィに罪はなさそうです。
 少しすると、ブルームハッターは箒を動かす手を止め、顔を上げました。帽子の鍔を押し上げて額の汗を払い、そのまま大きく伸びをして辺りを見渡します。
「ふう、今日は日差しが強いですね。……おや?」


「や、やめてくださいぃ〜」
「遠慮してんじゃねーよ、ほらほら」
 オアシスからほど近い砂漠の一角で、ウォーターガルボがバルビィに水を噴きかけています。
「いやぁ〜〜」
「何が、いやー、だよ。水が欲しいからオアシスに案内しろってんだろ、ほらほら、水ならいくらでもやるよ」
 ウォーターガルボはそう言うと、やや斜め上の方向に水を噴き出します。放物線を描いた水がバルビィの頭の花に直撃し、バランスを崩したバルビィが転びました。そこに更に水が襲いかかります。
「や、やめぇ」
 これはいけません。確かに球根の成長には沢山の水が必要ですが、あまりにも水が多すぎれば腐ってしまうこともあるのです。小学校の理科で習わなかったのでしょうか。
「引っ越してきたばっかのくせに俺様に声をかけるなんて生意気なんだよ。大体なんだよ『かくれリーフ』って。無敵はずるいだろ無敵はよぉ。反省しろってんだよぉ」
 しかもウォーターガルボの理論はめちゃくちゃです。ウォーターだって充分強いのですから、これでは八つ当たりにもなりません。
「ごぼごぼ」
「はっはっは、まぁ気が済んだらオアシスに運んでやるからよ。ほーら、もう一回」
「まてーい!!」
 そこに突然、二人のものとは別の声が響き渡りました。
「ごふっごほっごほっ! な、なんだよ?!」
 驚いて水を吐き損なったウォーターガルボは盛大にむせると、声のした方に勢いよく振り返ります。声は凄んでいますが、むせたばかりで口から水が滴っているので、顔がいまいちキマっていません。
「そこのウォーターガルボ! 弱いものいじめはやめなさい!」
 声のした方には一つの砂丘、砂丘の上には一つの人影がありました。赤い足、黄色い体、そして、頭にはオレンジ色の人なつっこそうな笑顔。そんな風体の人影が、右手に持った箒をウォーターガルボの方に突きつけています。
「誰だお前……ってその箒どう見てもブルーム」
「我が名はスカーフィ仮面! ポップスターの平和を乱す奴は私が許さん! トウッ!」
 スカーフィ仮面と名乗ったその人影は、ウォーターガルボの言葉に耳を傾ける気配も見せず、ふたりの方へ大きくジャンプします。そして、不安定な砂の足場も何のその、華麗な着地を決めると、改めてウォーターガルボに対してファイティングポーズを取ります。笑顔で。
「い、いやいや、とう、じゃなくてだな……」
 どこから突っ込んで良いか分からないウォーターガルボはしどろもどろです。
「そうか、弱いものいじめをやめる気はないと言うのだな」
「いやそんなことは言ってねーよ、やめるとも言ってないけど」
「ぷはっ、はぁ、はぁ……??」
 一方、水攻めから解放されたバルビィはどうにか息を整えると、転がったまま声の主を見上げました。どうやらこの笑顔の好青年が自分を助けてくれたようです。引っ越してきたばかりで右も左も分からない自分に襲いかかるチンピラの魔の手、そしてそこに現れた好青年。これはもしかして!
「やはりやめないのではないか! では……くわっ!!」
「あ、ありが!?!?」
 バルビィがとにかくお礼をと思ったその刹那、これ以上ない笑顔だったスカーフィ仮面の顔が、一つ目で鋭い牙を持った鬼のような形相に変わりました。
「きゃぁぁぁぁ〜〜〜怖いぃぃぃ〜〜〜〜!!」
 バルビィは驚きのあまり、そのまま転がって逃げてしまいました。
「えっ、あっ、ちょっとキミ!」
「……さ、さすがスカーフィ仮面を名乗るだけのことはあるな。どうなってんだよその仮面……」
 盛大にたじろいだウォーターガルボが、平静を装って問います。
「……う、うむ、被害者の救出は完了した! 今日はこれで見逃してやろう!」
 一方のスカーフィ仮面は転がるバルビィを呆然と目で追っていましたが、それが見えなくなると、ウォーターガルボの質問を無視してこう締めくくりました。そして瞬時に笑顔に戻るとサッと踵を返し、立ち去ろうとします。
「コラ待て、無視すんじゃねぇ! というか救出じゃなくて驚かしたんじゃねぇか!!」
 ウォーターガルボが声を荒らげます。ようやく状況が整理できて怒り心頭と言ったところでしょうか、その顔は普通のガルボのように真っ赤です。
「……何だね、私と戦いたいと?」
 スカーフィ仮面はその言葉を聞くと、もう一度サッと向きを変え、ウォーターガルボに向き直りました。
「戦いたいとかじゃなくて、オトシマエつけさせろってんだ!」
 ウォーターガルボは早速と言わんばかりに口の中に水を溜め始めます。
「……仕方ないな、気は進まないが、悪党を懲らしめるのも仕事の内……」
 スカーフィ仮面はその様子を見ると、大きく息を吐き、そして再び鬼の形相に戻りました。


 数分の後、心配になって戻ってきたバルビィが岩影から恐る恐る覗き込むと、そこには蒸気に包まれてすっかり蒸し上がったウォーターガルボと、仮面以外の部分がこんがりを通り越して真っ黒に焦げたスカーフィ仮面が、仲良く倒れていました。二人の周りは大きく砂がえぐり取られ、ちょっとしたクレーターのようになっています。
 バルビィがそのまま、恩人を助けたい気持ちと何もなかったことにして逃げたい気持ちとで真剣に悩んでいると、不意に、倒れたままのスカーフィ仮面からその象徴たる『仮面』が剥がれ落ちました。……いえ、『仮面』が浮かび上がりました。
 スカーフィの鬼の形相をしたその『仮面』は、おもむろに大きく息を吸い込むと、ぽこん、という小さな音と共に球体に近い姿に変化します。そして。
「やっぱりこいつもダメか……」
「?!?!」
 なんと『仮面』が喋りました。バルビィは絶句します。
「このスカーフィ仮面様にふさわしい者は、この星にはいないのかね。これじゃあヒーローになれないじゃないか……」
 そしてスカーフィ仮面の『仮面』――もとい、スカーフィは、ふっと笑顔に戻ると、そのままふわふわとその場を去って行きました。……完膚無きまでに懲らしめられたウォーターガルボと、それ以上に至近距離で爆発を受けた、何の関係もない善良なブルームハッターをその場に残して。
 そしてバルビィは、早くも次の引っ越し先を考え始めるのでした。


 続く……?



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 お読みいただきありがとうございました! ハガネカービィです。

 今回は第5回お題小説『被り物』の参加作品だったわけですが、もう見ての通りというか、ヒーローのようなそうでもないような存在が主人公(?)の、ギャグのようなそうでもないような小説になりました。テーマはヒーローのマスクですが、ヒーローのマスクだったかどうかも怪しいですね。
 ……何だか語るネタもまとまらないので、たまにはさっくり終わっておこうかと思います。あ、『続く……?』で締めていますが、続くかどうかは未定です。

 そんな作品ですが、感想などありましたら、お題小説参加作品リストのコメントフォームか、感想掲示板から気軽にお伝えいただけましたら嬉しいです。
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 それでは改めて、お読みいただきありがとうございました!
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