ハガネカービィさんの小説

【お題小説参加作品】[星のカービィ Wii]プロローグ*最初の一ページ


「こうして勇者カービィのカツヤクで、ブジにみんなのおひるねタイムが戻ってきた、ということダヨォ」
 嬉々とした表情でこう語った青年が、両手を前に出した。するとその手袋の間、何もなかった場所の空気が揺らぎ、立体映像が浮かび上がる。そこには黄色く輝く星が映っていた。
「これが物語のブタイ、ポップスター。カービィはここに住んでいるんだッテ」
「わー、すげぇー」
「きれーい」
 青年を囲むようにして物語に聴き入っていた子供達が感嘆の声をあげる。
「……カービィはほかにもカツヤクしたの?」
 横から覗き込んでいた少年が、控えめに質問した。
「ウン、色々あるヨォ。ソウダネ、次は『宝箱に封じられた魔物』ッテいうお話を」
「ねぇねぇ、わたしカービィがみてみたいのー」
 青年の言葉に割って入るように、正面の少女が言う。
「エッ」
「あ、オレもみたい! にいちゃんのそれならうつせるんでしょ?!」
 少女の隣の少年も食い付いてきた。
「えっトォ……ごめんネ、ちょっとカービィは映せないんダァ」
「えー、ダメなのー?」
「ケチー」
「いや、ケチとかじゃなくて……ゴメンネェ」
 青いフードに隠れた頬に、冷や汗が伝う。
「あっ」
 そこで別の少女が声をあげた。携帯通信機を取り出す。
「ママからだ、かえらなくちゃ!」
 少女はそれだけ言い残すと一目散に走り去る。
「げ、もうそんなじかんか!」
「マントのおにいちゃん、またねー」
 それを見た他の子供達も慌てたように散らばっていった。
「あ、う、ウン。またネー……」
 青年がそう返して手を振り終わる頃には、もう声が届くところには誰もいなかった。残されたマントの青年、マホロアは助かッタと呟くと、両手の間の星をかき消す。
 今子供達に見せていたのは、『異空間ロード』。その場と遠くの空間を繋げる、マホロアの一族に伝わる秘術だ。そう、先ほどのポップスターは『映像』などではなく『本物』なのである。この術を使えば、どんなに遠くの場所でもタイムラグ無しに観察することができる。
「デモ、それだけなんだヨネェ……」
 一人ぼやく。ただ遠くを見るだけなら機械で代用できる。しかも、どんなに遠くでもと言っても、瞬時に好きな場所が映せるかと言えば話は別だ。対象が遠ければ精度も落ちるし、動いているもの――例えばカービィを捉えることは不可能に近い。もっと大きな穴が開けられれば別な使い方もあるかもしれないが、残念ながら掌サイズが限界だ。
 過去にはこの術で『予言者』と持てはやされたこともあったようだが、その次にはこの術を不気味がる時代が来たという。邪悪な心が封じられている、という噂が立って、一族が迫害されたとの文献を見た記憶もある。今でも、科学に依存するこの星では、科学で説明できないこの術を快く思わない者は少なくない。以前子供達に見せていたところにその親が現れ、教育に良くない、と怒鳴られたことを思い出す。
 考えれば考えるほど気が滅入る。マホロアは頭を振った。
 『とおいポップスターにいるというみんなのヒーロー星のカービィ! わるいヤツをやっつけたり、ひとだすけをしたり、ウチュウをマタに、大カツヤク!』
 子供達に聞かせた話の、導入の一言が脳裏をよぎる。
「星のカービィ、カァ」
 ポップスターへ繋がる異空間ロードを、もう一度開く。
「……ボクのことも、助けてくれたりしないかナァ……」

 とぼとぼと街を歩いていたマホロアは、一つの建物の前で立ち止まった。ここは『本』が売られている店だ。紙に情報を記して束ねただけの、単純な情報媒体。コンピュータの発達に伴って廃れてしまい、この店も骨董品店に近い。
 自動ドアをくぐったマホロアは、その足を右奥の棚に向ける。その棚には『伝承・寓話』という札が付けられていた。棚に目をやると『絵画の見た夢』『ぎんがのはてのだいすいせい』『水晶伝』『CROWNED DRAGON』等といった文字が目に入る。絵が添えられた子供向けから別の星の言語で書かれたものまで一緒くただ。マホロアはよくここに来てはこれらの本を眺めていた。科学の枷に捕らわれていない、夢に溢れた世界。そんな世界が大好きだった。カービィの話をはじめ、子供達に聴かせる物語はこの本棚から拾ってきたものが大半である。
 マホロアは何となしに『天かける船』と書かれた本を手に取った。ページをめくる。古の人々が創った伝説のアイテム、天かける船。それは船でありながら心を持ち、自分の力を本当に必要とする者のみを乗せ、遙か遠くの星々の間を瞬く間に――
「おい」
 不意に低い声が耳に飛び込んでくる。
「!!」
 マホロアはその声に心臓が飛び出るかという程に驚きすくみ上がる。ゆっくりと横を向くと、案の定、そこには店主の顔があった。ここの店主は立ち読みに厳しい。
「その本が欲しければ持って行っていいぞ」
「……ヘ?」
 あまりにも予想と異なる言葉に、素っ頓狂な声をあげる。
「あんちゃんはお得意様だったからな」
「は、ハァ、えっと、どうイウ」
 店主は目線を逸らせた。
「ここは閉店するんだ」
「エエッ」
「もうこの街では、いや、この星では本は売れねぇ。だから余所の星に引っ越しだ。あんちゃんが最後の客だよ」

「あーモウ、どうしてこんなにカナシイことばっかりなんだロウ」
 店を出て再びとぼとぼと歩く。
「ホント、誰でもいい、ナンでもいいから、こんな状況、変えてくれないかナ……」
 脇に抱えた本を見る。天かける船。超長距離を一瞬で旅する力を持つ船。自分の異空間ロードと似たようなものだろうか。船が通れるほど大きな穴が開けたら、自分だってもっと活躍できるし、こんな状況も作り替えることができるのではないだろうか。この船が本当にあれば……。
 ――探せ。探せばいいンダ。


 ビーッ ビーッ
 けたたましい警報音に思考が中断させられる。目の前のモニタは赤く染まり、その中央には敵対者のシルエットが表示されていた。
「ううーン、欲張り過ぎたカナ……そうイキナリ何もかも上手くいくようになったりしないよネェ」
 ボクは何をやっているんだロウ……。マホロアは、自らの手で復活させた『天かける船』ローアの操作盤の前で、がくりとうなだれた。あの時頭に浮かんだ言葉。自分の思考と関係なく聞こえてきた、でも自分の声の言葉。それに従って、文献を漁り、ローアの実在を、所在を探り当て、修理して……。
 ビーッ ビーッ
 警報の音が一回り大きくなる。一瞬の後、マホロアを激しい衝撃が襲った。ローアが攻撃を受けたのだ。ぼんやりしていたマホロアは衝撃に耐えられずに転倒する。
「うワァ、ぐ」
 ――逃げるンダ、ここでやられるワケニハ。
 またあの時と同じように声が聞こえ、そして強烈な頭痛に襲われる。マホロアは這うようにして操作盤まで近付くと、キーを叩きながら叫んだ。
「ローアッ! 異空間に逃げるヨォ!」
 モニタに『行き先を指定してください』の文字が浮かぶ。
「どこでもいいカラ、はやクッ」
 文字が『イメージ先への自動航行』に書き変わり、マホロアに青い光が照射された。
「はや、ク……ダレ、か、た……」
 ローアの舳先にあるエンブレムが激しく輝く。そしてそこから光の束が放出されると、目の前の虚空に大きな穴が出現した。ローアは真っ直ぐにその穴、異空間ロードに飛び込んでいく。その先に見える輝く星――ポップスターに向かって。

 ――まだ、運は尽きてないかもしれない、ネ……。

 意識を失いつつあるマホロアには、自分のこの声が二重に聞こえた気がした。


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 お読みいただきありがとうございました! ハガネカービィです。

 今回は第4回お題小説『毛糸のカービィ・あつめて!カービィ・星のカービィWii』の参加作品として、
星のカービィWiiのマホロアを主人公にお話を書かせていただきました。
 マホロアと言えば、唐突に墜落してきてカービィに出会い、冒険の過程ではシリーズでも数少ない
『喋るキャラ』として物語を盛り上げ、終盤ではアレでソレなキャラ、なわけです。
が、改めて見直してみると、どうしてこういう展開になったのかな、と気になりまして。
もちろん大筋はゲーム中で語られている通りなのですが、その立ち振る舞いを見ていると、
同じような形で物語に関わってきた旧作の某キャラとは、少し違う事情も持っているような気もしてきて……。
そんなところから空想を膨らませて、こんなプロローグを考えてみました。
 今回はゲーム発売直後と言うこともあって、なるべく物語後半の展開を直接描写しないように、
でもプレイ済みの人が(あるいは今後プレイする時に)ちょっと楽しくなるようなネタを忍ばせて、ということを意識しています。
結果分かりにくくなったりしていないかな、という不安はあるのですが、
ブジにつたわッテ、願わくば楽しんでいただけていたら幸いです。(おや、ATOKがマホロア変換を覚えてしまいましたネ)
 それにしても、こんな設定のマホロアはどうなのでしょう。
こういう設定自体は世の中ではありきたりかもしれないなーと思いつつ、
でもここまで散々楽しんできたカービィワールド(自分の脳内の)ではこういう姿に行き着くキャラはいなかったので、
割と新鮮な気分で書けました。
ゲーム自体も随分楽しめているカービィWii、まだまだ新しい楽しみを与えてくれるようです。

 こんな作品ですが、感想などありましたら、お題小説参加作品リストのコメントフォームか、
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 それでは改めて、お読みいただきありがとうございました!
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