ハガネカービィさんの小説

【エピソードパズル参加作品】[コレカラスター]桃色の……


 むかしむかし、そのむかし。
 ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんが若くて勇敢な戦士だった頃のお話じゃ。
 その頃のこの辺りでは、種族ごとのまとまりが何よりも大切にされており、同時に種族同士の対抗心がとても強かった。みんながみんな、自分たちの種族こそが一番凄くて他の種族には絶対に負けないのだと、強い誇りを持っておったのじゃ。
 これは、そんな時に起こった、ある騒動のお話じゃ。


桃色の……


 さて、各々の種族はとても強い自信と誇りを持っていた。それ自体は結構なことなのじゃが、みんながちょっと自信を持ちすぎておったのでな、他の種族と出会うと、ついついすぐにケンカを始めてしまった。じゃから自然に、ガルボ族やプテラン族は高い山の上、ガボン族やカパー族は地下の鍾乳洞、ロッキー族達は岩山、そしてワシらヤリコ族はジャングルにというように、みんなそれぞれ別の場所に分かれて住むようになっていった。いわゆる縄張りじゃな。他の種族と会わなければケンカにはならない……ある意味では賢いし、ある意味では勿体ない……ともあれまぁ、みんな他の種族とは会わないようにして、それなりに平和にやっておったわけじゃ。

「えー、ぼく、カパーくんとあそべないのいやだよー」
「ねぇねぇ、ヨガンさまはいたの? やっぱりあえないの?」

 ほっほっほ、そうじゃのう、みんなと会えなかったらつまらないのう。ヨガン様は勿論おったぞ。その頃から力がとても強くてな、どの種族も、ヨガン様だけは讃えて従うようにしておった。

 そんなある日。そう、それは良く晴れて綺麗な星空が見える夜のことじゃった。急にほうき星がたくさん見えたかと思ったら、空からいくつもの『きらきら石』が落ちてきたのじゃ。その『きらきら石』は本当に綺麗でな、ジャングルに流れる川の水のように透明で、火の山のマグマのように明るく、それでいてお月様のように優しく光を放っておった。

「へー、みてみたいなー」
「あしたさがしにいこうぜ」

 しかしじゃ。『きらきら石』はあんまりにも綺麗だったものじゃから、みんなが欲しがった。最初のうちは拾った者が自分の宝物にしていたのじゃが、そのうちに取り合いになってしまってのう。同じ種族の中で争っても良いことは何もないということで、じきに、それぞれの縄張りに落ちた石はそれぞれの族長のところに届けるというルールができた。

「ゾクチョウ?」

 族長というのは、当時の長老様達のことじゃ。その頃はそれぞれの種族が別々に暮らしておったから、それぞれの種族に一人ずつ決まった長老様がいたのじゃ。
 族長達はケンカが起きないよう、集まった『きらきら石』を一つずつ秘密の場所に隠し、仕掛けや番人を配置して守るようにした。『きらきら石』の場所はその種族の者しかしらず、取り出せるのは族長だけ。このようにして『きらきら石』を種族みんなの宝物にし、誇りの一つにしたわけじゃな。
 そしてもう一つ、族長達はそれぞれの種族が見つけた中で一番大きな『きらきら石』を火の山に届けて、ヨガン様にお納めした。みんなが欲しがる『きらきら石』じゃから、一番大きな石をヨガン様に納めることで、自分たちの種族の凄さを示そうとしたのじゃ。
 じゃが、族長達の思惑は外れてしまった。ヨガン様がそれぞれの種族の持ってきた『きらきら石』を並べて大きさを比べようとしたら、なんとそれらの『きらきら石』がくっついて、ひとつの大きな石になってしまったのじゃ。これには族長達も揃ってびっくり、慌ててなんとか石をばらばらにしようとしたが、石は投げても叩いても割れない。結局、ヨガン様はとても大きな『きらきら石』を手にしてご満悦じゃったが、一番凄い種族を決めることはできなかった。

「そっか、いちばんおおきいのはヨガンさまのところにあるのか」
「だめだよにいちゃん、ひのやまにちかづいたらおこられるよ」

 うむ、火の山に近付いてはいかんぞ。それにこれは昔の話じゃからな?
 まぁともかく、一旦はこれで『きらきら石』の取り合いは終わった。それぞれの種族は、時たま族長の許しを貰って宝物の『きらきら石』を眺めながら、今まで通りの生活に戻っていったのじゃ。

 ところが、それからお日様が十回も昇った頃だったか、ジャングルのはずれにまた、ひとつだけ、大きな大きな『きらきら石』が降ってきた。なんとこの『きらきら石』は、ヨガン様の石よりももっと大きかったものじゃから、これを見つけたヤリコ族の戦士は大喜び。早速族長を呼びに行こうとしたのじゃが……

「「じゃが?」」

 その『きらきら石』が大きく光ったかと思うと、なんとその光の中から5人の悪魔が出てきたのじゃ!
 もちろんヤリコ族も最初はその者達が悪魔だとまでは思わなかった。どこからか見知らぬ種族がやってきたのだろうと思い、いつも通りに追い返そうとしたのじゃ。
 ところが悪魔達は強かった。特にその中でも桃色の悪魔が強くて、そこにいた二人の戦士はあっさりと負けてしまった。しかも、そうこうしているうちに、近くの落とし穴の中に隠してあった『きらきら石』が悪魔に見つかってしまい、持って行かれてしまったのじゃ。
 知らせを受けたヤリコ族の族長は、すぐにヤリコ族の戦士全員に通達し、ヤリコ族やジャングルの動物達、それに『きらきら石』を守るように命じた。しかし、悪魔は本当に強かった。戦士達はそれぞれ武器や仕掛けを使える限り使って悪魔達に挑んだが、どうしても倒しきることができず、結局ジャングルの『きらきら石』は全部悪魔達に奪われ、奴らは山の方へ去ってしまった。

「せんしさまがまけるなんて……」
「ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんもまけちゃったの……?」

 ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんは、族長を守っていて『きらきら石』の側にいなかったから、悪魔とは出会わなかったのじゃ。じゃが、悪魔がジャングルを越えたという知らせを聞くと、いてもたってもいられなくなり、山に向かった。山に住むガルボ族に悪魔のことを伝えに行ったのじゃ。
 とはいえ、最初に言った通り、そのころの種族同士は誇りが高すぎて、仲が悪かった。ヤリコ族の族長も「そんなことをする必要はない」と引き留めたし、山の入り口を守っていたガルボ族もばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんを追い返そうとした。それでも、ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんは諦めずに進み、何とかガルボ族の族長に悪魔のことを伝えたのじゃ。
 ガルボ族の族長も最初はばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんの話を信じようとはしなかったが、悪魔はすぐに現れた。悪魔が本当に現れたのでは信じるしかない。ガルボ族の族長は慌ててガルボ族の戦士達に命じ、悪魔と戦い始めた。ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんもその戦いに加わって、ガルボ族の中でも一番大きなガルボが守っている谷で、悪魔と戦った。

「「(どきどきどきどき)」」

 その戦いぶりは見事なものでな、ガルボ族の戦士が炎を吐き、悪魔がそれを避けようとしたところにばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんの槍が飛ぶ。すると慌てて槍を避けようとした悪魔はバランスを崩し、ガルボ族の戦士の炎に焼かれた。ガルボ族はパワーはあるが素早い動きが苦手で、ヤリコ族は動きは早いが力が弱い。この弱点を補い合って戦ったわけじゃな。こうして見事、ガルボ族とばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんは悪魔を追い返したのじゃ。

「やったぁー!」
「ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんつよい!」

 じゃが。

「「えっ」」

 悪魔はとても諦めが悪かった上に、やはり、強かった。次の日にもう一度谷まで来たかと思うと、怪しい術を使い、自らの体を石に変えたのじゃ。相手が石では、ヤリコ族自慢の槍も刺さらないし、ガルボ族の炎でも燃やすことができない。今度は、ばあちゃんのばあちゃんのばあちゃんも負けてしまった。

「そんなぁ」
「ううーん」

 こうして山を超えた悪魔達は、次に鍾乳洞に降りていった。そこでも当然、カパー族達が悪魔と戦ったが、やはり勝てない。しかもじゃ。鍾乳洞には物凄く固い岩で守られた『きらきら石』の隠し場所があって、最初は上手く悪魔達からも守れたのじゃが、どこで嗅ぎ付けたのか悪魔達はすぐ戻ってきて、洞窟が崩れるのではないかというような大きな爆発でその隠し場所をも暴いたそうじゃ。
 この爆発には鍾乳洞に住む者以外も怯えてしまってのう……このままでは全ての『きらきら石』を奪われてしまうし、戦士以外のみんなまでやられてしまうかもしれない……そう思った戦士達は、その先の岩山ではジャングルから岩山までの全員がかりで悪魔に立ち向かった。じゃが、ある者は燃やされ、ある者は石の術で体当たりされ、ある者は雷に打たれ、ある者は凍り付けにされてしまった。まさに悪魔の所業じゃ。
 そして、岩山の『きらきら石』も奪われて、最後に……

「あくまこわい……よぅ」
「あ、『きらきらいし』は……」

 そう、悪魔達は、ヨガン様の持つ『きらきら石』を狙って火の山に乗り込んだ。お前達も知っての通り、火の山はワシらでも近付いては危ない、熱い熱いマグマが流れている場所じゃ。そして、そこに住む戦士達も炎の使い手ばかりで皆とても強い。彼らは自らの技にマグマの仕掛けを合わせ、悪魔達の進行を阻もうとした。それでも悪魔達も悪魔達で力を合わせ、時には回復しては執拗に攻め、時には山の洞窟を崩し抜け道を作って、ついにヨガン様のところまで辿り着いてしまった。

「…………」
「ヨガンさまならまけないよね?!」

 うむ。ヨガン様は今も昔もとっても強い。悪魔はヨガン様の熱に近付くことさえできず、ヨガン様の吐く炎に焼かれ、火の山の落石を受けた。さしもの怪しい術も近付けない相手には通じない。ヨガン様の力で悪魔もついに倒された。
 ……はずじゃった。ところが、後一歩のところで、桃色の悪魔はヨガン様を守っていたバーニスを捕まえると、卑怯にもヨガン様めがけて投げつけたのじゃ。ヨガン様もまさか自分の配下を焼き尽くすわけにも行かず、お顔にバーニスが直撃、気を失ってしまった。

「…………」
「ひどぃ……」

 ヨガン様が気が付いたとき、すでにヨガン様の『きらきら石』は奪われた後で、悪魔達は岩山まで戻ったところだったそうじゃ。悪魔の余りのやり方に怒ったヨガン様は、その力を全て奮い、火の山を爆発させた。悪魔のいた岩山はあっという間に炎とマグマに包まれ、流石の悪魔もこれにはどうしようもできず、ついに遠くへ逃げていった。やはり、ヨガン様は悪魔よりも強かったわけじゃな。
 こうして、この戦いは何とか我々の勝利で終わった。

 しかし、何とか悪魔は追い払えたものの、この地には大きな傷が残った。ジャングルも洞窟もボロボロだし、『きらきら石』は全部奪われてしまったし、戦士達は傷だらけだし、火の山の周りはマグマの力で大きく様変わりしてしまった。頭を悩ませた族長達はヨガン様の所に集まり、毎日のように相談して少しずつ、少しずつ生活の建て直しに務めていったそうじゃ。
 そして戦士達の傷が癒え、生活が安定し始めた頃、族長達はふと気が付いた。この前までお互いいがみ合っていたはずなのに、いつのまにか相談し、協力して問題を解決するようになっていたことに、じゃ。それは族長達だけではない。ヤリコ族は木の上の果物を集めて他の種族に配っていたし、カパー族達は枯れ木を切って薪を作り、ガルボ族はその薪を燃やした炎で洞窟を照らし新しい住処を作った。悪魔と共に戦った経験が、種族の壁を越えて協力するという考えを導いたのじゃ。

 こうして、この地ではみんなが協力して生活をするようになり、そのうちに種族や族長という考え方も薄れ、今に至る平和な暮らしができあがっていったのじゃ。いつしか桃色の悪魔も、この地のみんなの生き方を変えてくれた英……

 ・
 ・
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「…………」
「…………」
「……ほっほっほ、このお話はちょっとばかり長すぎたかのぉ」
 ヤリコの老婆が横を見ると、そこには幼いヤリコの兄弟が仲良く寝息を立てていた。老婆はゆっくりと立ち上がり、二人の体に大きな葉を被せると、音を立てないように洞窟の出口へ向かう。
「今夜も星が綺麗じゃの。あの日のようじゃ……」
 そして、夜空を見上げ、誰にともなく呟く。
「悪者にしてしまってすまないの、英雄殿。今では我々は、貴方達にとても感謝しておりますぞ」
 もっとも、あの時に石の体で蹴られた背中は、今でもちょっと痛みますがの、ほっほっほ。老婆はそう続けると、幼子達の所へ戻って行った。


おしまい





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 お読みいただきありがとうございました。ハガネカービィです。

 さて今回は、エピソードパズル『カービィワールド紀行録』ということで『コレカラスター』を担当させていただきました。
 企画への参加を決めた当初、折角の土地縛りということで、伝承のようなその土地に根付いた物語か、あるいはその土地の特有のキャラクター(ボスなど)を主人公にしたいなぁと考えていました。
 しかし、どうにもいまいちしっくりくるネタが浮かばず、これは困ったと色々とひっくり返していましたところ、ふと、何年も前に考えた『ヤリコのおばあさんが重要キャラになっている小説』を思い出しまして。そのお話自体は今回のお話とは全くの別物なのですが、そこから構想して、ヤリコお婆ちゃんの昔話という形に仕上がりました。昔話語り風でやるには5000文字はちょっと長いかなとも思ったのですが、もし最後まで飽きずに読んでいただけたようなら幸いです。
 余談ですが今回のお話、個人的には脳内のカービィ64ワールドがまた少し広がったので割と満足感があります。スーパーデラックスの『銀河に願いを』もそうですが、ポップスター内ならまだしも、他星に行くともはやカービィは侵略者なんじゃないかというのは、たまに考えてしまうポイントです。(笑)

 さておき、こんな作品ですが、感想などありましたら、エピソードパズル作品リストの一言コメントフォームか、感想掲示板から気軽にお伝えいただけましたら嬉しいです。
 フォーム:http://www.knml.net/event_bbs/puzzle002.htm (期間限定)
 掲示板:http://www.knml.net/impre_bbs/read.cgi?no=1

 改めて、お読みいただきありがとうございました!
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