ハガネカービィさんの小説

【お題小説参加作品】[あったか]あったかぽよぽよ


あったかぽよぽよ

「ううー、今日も寒いなぁ……」
 とある真冬の昼下がり、カービィは自宅の小さな暖炉の前でホットミルクを啜っていた。
 地域によって気候に大きな差のあるプププランド、カービィの家はその中でも特に四季が明確に表れる地域に建っていたが、それを踏まえても今年は寒い。せめて雪でも降ってくれればはしゃぐ気にもなろうものだが、空気はカラカラ、外は北風が吹き荒ぶばかりである。このため体感の寒さは更に厳しく、カービィ邸のもう一人の住人グーイに至っては、ここのところは家どころかカービィの体からすらなかなか出てこようとしない。
 ばたーん!
 そんな折り、唐突に玄関の扉が勢いよく開かれた。カービィはその音と吹き込んできた冷たい風に驚き、思わず跳び上がりそうになる。振り向いて扉の方を見ると、そこにはカービィの2倍ほどもある大ハムスター、リックが立っていた。リックはその大きな口をゆっくりと開く。
「カービィ……」
「な、なぁに、どうしたの、リック」
「抱かせろぉーーー!!!」
「はぁ?!」
 言うやいなや、リックはカービィに飛びかかる。カービィはそのあまりの剣幕に、反射的に身をかわした。的を失ったリックの体が地面に激突し、カービィの取り落としたミルクが暖炉の炎を消す。そして唯一の熱源を失った室内が吹き込む北風に冷却されると同時に、リックが飛び起きてカービィの方を向き直った。
「さささささささ寒い……ぽよぽよさせろーーー!!!」
「何言ってるのさー?!」
 再び飛びかかるリックをかわし、カービィは家の外に飛び出す。リックもすぐに体制を立て直し、土煙を立てながら後を追う。土煙が晴れると、そこにはいつの間にカービィの体から飛び出したのか、グーイが一人立ち尽くしていた。
「うーん、仲良しさんですねぇ……うう、寒い寒い」
 グーイは何かを納得したような声で呟くと、そそくさと家の中に戻り、扉をぴったりと閉じ、改めて暖炉に火を灯した。

「まぁてぇー! あったかぽよぽよさせろーーー!!」
「だから何言ってるのさぁーーー!」
 カービィとそれを追うリックはカービィの家を離れ、ベジタブルバレーの草原を駆け回っていた。
「ナゴから聞いたぞ! カービィの抱き心地はあったかぽよぽよころころふわふわ、特に冬場は至高の一時だって! オイラにもあったかさせろー!」
「なにそれぇーーー!」
 リックがみたび飛びかかる。カービィはジャンプしてかわしたが、今度はリックも転ばず、カービィの着地点を狙う。カービィは器用に体を捻り、リックの背中側を滑り降りるようにして着地した。
「オイラの毛皮はスマートで寒さには弱いんだよ! ナゴの毛皮の方が厚いのに、ずるいじゃないかぁ!」
「そんなこと僕に言われてもー!」
 そしてまた追いかけっこが始まる。
「あ、カービィだ!」
「あったかだ!」
「ぽよぽよだ!」
 その騒ぎに、ベジタブルバレーを歩いていたワドルディが、飛んでいたブロントバートが、掃いていたブルームハッターが、反応する。
「オイラの頼みが聞けないのかー!」
「寒いよカービィ!」
「あったかさせてくれ!」
「ぽよぽよ、ぽよぽよ!」
 そしてリックと合流し、カービィを追い始めた。
「ええー、みんなもー?!」
 カービィが叫ぶ間にも、キャピィが、スパーキーが、ワドルドゥが、一団に合流する。そしてカービィを追う集団は瞬く間に膨れあがっていった。

「……さすがリック、想定通り過ぎる動きナゴ。そのままもう少しカービィを追い回すナゴよ」
「……ねぇ、何でそんなにカービィを怒ってるの?」
 草原の端に位置する小高い崖の上から、その様子を見下ろす者が二人。その一方、毛糸の帽子を被ったチュチュがそう問う。
「カービィが、ぼくの大切なコタツに元気ドリンクをこぼして壊しちゃったのナゴ。ぼくの至福の時を奪った罪、身をもって償って貰わないと」
 布団の塊……もとい、布団にくるまったもう一方、ナゴが淡々と答える。なるほど、そのくるまる『元コタツ布団』には、ジュースらしき物の染みが大きく残っている。ナゴの細い目がいつも以上に鋭いような感覚を覚えつつ、チュチュは草原に視線を戻す。
「うーん、気持ちは分かるけど……これはちょっと、やりすぎじゃない……?」
「んー……」

 草原の上、カービィを先頭とした集団は、いよいよその規模を増してきていた。
「まーつーウーホー!」
「カービィ殿、止まるでゴワスー!」
「チキチキ、今日は投げないから、ちょっと挟ませなさい!」
 先頭に立つボンカースが、ジュキッドが、バグジーが、口々に叫ぶ。
「ちょっとぉ! なんで力持ちさんばっかりなのさぁ?!」
 必死に走りながらカービィも叫ぶ。しかしその問いは後続にとっては知ったことではない。
「そ〜ら、止まれぇ〜」
 ついで先頭に出たポピーブロスSr.が投じた爆弾が、カービィの真横で豪快に炸裂する。
「うわっと、と、と」
 カービィは転びそうになりながら何とか爆風を避けたが、これを皮切りに、後続集団に実力行使に訴える者が増え始めた。ナッツが、レーザーが、カッターが、プラズマ波動弾が飛んでくる。極めつけに、カービィの真上をファイアーライオンが燃えさかりながら掠めていった。
「君は寒くないでしょッ?! わ、わーぷすたぁー!!」
 思わず突っ込みつつも、これはたまらんとカービィは携帯通信機を取り出し、ボタンを押して叫ぶ。間髪入れず、目の前に一人乗りのワープスターが落下してきた。
「あ、待てーー!!」
 後続の声が綺麗にハモったが、待てるはずもない。カービィはワープスターに掴まって急上昇していった。

「あ、行っちゃった……」
 カービィが雲の中に消えるのを見届けると、チュチュは改めて、ナゴの方に向き直る。
「うん、さすがカービィ、機転が効くナゴ。まぁ程良い程度で終わったナゴね」
 ナゴは特に表情を崩してはいないが、少し満足げな声を上げた。
「で、でも、この様子じゃカービィ暫く追っかけられるんじゃない?」
 残された集団が草原で騒ぎ立てる声が、かなり離れたチュチュの耳元まで届いてくる。
「それは大丈夫。クラッコによれば明日はあったかくなるナゴ。みんなすぐ忘れるナゴよ」
「……計算尽く、なのね……」
 この時チュチュは、気温の低さとはまた違った寒さを感じた気がしたという。

 一方のカービィは、あっという間に雲を突き抜け、宇宙へと飛び出していた。ここまで来ればそうそう追ってこられないはず、全くみんなして僕のお肌をなんだと思ってるのさ……。ワープスターを停止させると、一つため息を付く。そしてちょっと考える。
「むうー、逃げ切ったは良いけど、この後どうしよう……。ダークマターとかに操られてる感じじゃなかったし、みんなが飽きるまで放っておくしかないのかな……」
 そう呟くと、何とも無しに周囲を見渡す。すると、視界にかつての戦いで旅した星々が飛び込んできた。
「……この際だし、どこかあったかい星にでも避難しちゃおうかな」
 その視線が、一番過ごしやすそうなハート形の惑星に定まった。

「えー、リボン、カービィ様ってそんなにあったかいの〜?」
「うん、そうなの。カービィさん、あったかくって、ぽよぽよでやわらかくて、でも、私が掴んでいるはずなのに、まるで私が包まれてるみたいで……。ゼロツーはとっても怖かったけど、凄く落ち着いて頑張れたんだ!」
「包まれるみたいなあったかさかあ〜。良いなぁ、今度私も抱きつかせて貰おうかな」
「あ、私も私も。ぽよぽよって興味ある〜」
「なになに、何の話〜?!」

「う、何か寒気が……」
 カービィは本能的に一つ身震いすると、改めて周囲に視線を巡らせるのであった。


おしまい。


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 お読みいただきありがとうございました。ハガネカービィです。

 『あったか』をお題にした短編小説、いかがでしたでしょうか。
 前回が殆ど動きのない会話中心の短編だったので、
 今回はキャラクターに動きのある作品を、と意識してみました。
 ギャグ方向の作品という点では同じですが、
 内容はそれなりに違った感じになったのではと思っています。

 ギャグ方向、転じてギャグでない方向と言えば、
 本編中でリボンが語っているようなエピソード(ゼロツー戦)も
 シリアス調、あるいは心情描写重視でそのうち書いてみたいなぁなどと思います。
 前回もそうでしたが、一つ小説を作ろうとすると
 結構派生ネタも思いついて面白いですね。
 こうやって楽しんで自分の中の世界観を膨らませていけたら素敵そうです。

 そんな作品でしたが、もし感想などありましたら、
 感想掲示板↓に気軽にお願いいたします。
  http://www.knml.net/impre_bbs/read.cgi?no=1

 それでは、皆さんの作品も楽しみにしております!
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