ハガネカービィさんの小説

【お題小説参加作品】[お菓子]おかしなたたかい


おかしなたたかい

 時は『虹の島々事件』の少し後。星の勇者が宇宙を股に掛ける7つの戦いを繰り広げる半年ほど前のことである。ここに歴史の影に埋もれた、一つの知られざる戦いがあった。

「というわけで、メイス、おかし♪」
「いきなり来て何を言ってるだスか」
 強い夕日に照らされたオレンジ色の丘に、大きな黒い影がそびえ立っている。その大きな影……建造中の建造物、後のメタナイト要塞である……の門の前には、3つの小さな影があった。
「ロロロにきいたよ、今日はおかしをもらうか、イタズラする日なんでしょ? はろいんっていう」
 大きな影を背にした小さな影、メイスナイトの問いに、相対する影、カービィが答える。そして、ラララはくれたよ、と付け加えた。
「ハロウィン……チルドレンが家々でお菓子を貰って歩く、秋のイベントですね。Trick-or-Treat というキーワードも有名です」
「そうそう、とりっくおあとりーと」
 メイスナイトの後ろに控えたもう1つの影、ギムが解説する。
「ハロウィンぐらい知ってるだス! 全く、あの夫婦はこういうのが好きなんだから……」
 メイスナイトが頭を抱える。
「こんなに大きなおうちを作ってるんだし、おかしぐらいあるでしょ?」
「これは家じゃないだス! そんな物も無いだス!」
 建造中とはいえ大事な要塞を家扱いされ、つい語気を強める。
「ええっ、ないの?! おかしだよ?!」
 それを聞いたカービィは、その事実が信じられないという風なリアクションを返した。
「メタナイツはお菓子など持っていないのだス!」
 メイスナイトが、ふん、と突っぱねる。
「えー、でもボク、メタナイトにいっぱいキャンディもらったよ?!」
「うぐっ」
 メイスナイトが言葉に詰まる。確かにメイスナイトの属するメタナイツの主……この要塞の主でもあるメタナイトは、先の『夢の泉事件』で、カービィにキャンディを与え、支援を行っていた。
「ぬぅー……メタナイト様ぁ、何であんなややこしいことをしただスかぁ……」
「ね、やっぱりおかし、あるでしょ? 思いだした?」
 小声で呟くメイスナイトに、追求の手がかかる。しかし、仮にも敵であるカービィ相手に、あっさりと引き下がるわけにはいかない。そう、そもそも敵なのだ。
「だ、大体、こういうのは仲の良い者同士でやるもんだス。なんでここに来るだスか」
「それはね、メタナイトがくれたキャンディがおいしかったから」
「ぬぐっ」
 メタナイト様ぁー。メイスナイトの中で心の叫びが木霊し、その瞳が遠い空の彼方を見つめる。しかしカービィはそんなことはお構いなしに、メイスナイトの顔を見上げて続けた。
「それとも、イタズラしていいの?」
「近代のハロウィンは儀式的な物であり、家々はトリートをセレクトするのが基本です。イタズラはしません」
 すかさずギムが口を挟む。
「でも、くれないならしかたないんじゃない?」
「ぬ、ぬぅー、そ、それは駄目だス」
 そんな理由で進入されたら、門番の面目丸潰れも良いところである。
「イタズラがいやならちょーだい」
 正直、力尽くで追い返してしまいたい。メイスナイトはそう思った。しかし、建造中の要塞は暴れるには強度に不安があったし、何より、メタナイツの大切な計画のために、ここでカービィと騒ぎを起こすわけにはいかなかった。
 とはいえどうした物か……と、そこにピンクの球体が手を差し出した。その姿を見たメイスナイトは、あることに気が付く。
「そ、そうだ、カービィ! お前は仮装をしていないだス! そんなことではハロウィン失格だスよ!」
「……かそう?」
 カービィが目をぱちくりとさせる。
「そうだス。ハロウィンは仮装しないといけないのだス」
「仮装とは、他の生き物やモンスターなどの格好をする事です。ハロウィンの場合は、吸血鬼や魔法使いの格好をすることがポピュラーです」
「ギムっ、余計なこと言っちゃ駄目だス!」
 三度解説を挟んだギムを、メイスナイトが睨み付ける。
「まほうつかいかぁー……」
 それには気付かず一瞬思案げにしたカービィの頭上に、電球が浮かぶ。
「そうだ、シミラいる?」
「……コピーする気だスな? 残念ながらいないだスよ」
「えー、じゃあワドルドゥは?」
「いないだス。……ワドルドゥは、いないだス」
 メイスナイトはそう言いながら、密かに周囲を見回す。ここで見張りのレーザーボールでも飛んで来た日には水の泡だからだ。ついでに、ギムの口を押さえつける。
「むむぅー」
 今度はカービィが唸った。その様子を見たメイスナイトは、小さくため息を付くと、大げさに、しっしっ、と右手を振る。
「さあ、帰った帰った、だス」
「でもぉ〜」
 カービィが残念そうに、口元に手を当てながら見上げる。
「か・え・る・だ・ス!!」
 強調するメイスナイト。これを聞いたカービィが、今度はぷくーっと膨れあがる。
「むぅ、メイスのけちー!」
 そしてそれだけ言い残すと、夕日に照らされた坂道を駆け下りていった。
「……ぷぅ。ヤバかっただス……」
 カービィが見えなくなって少ししてから、メイスナイトは改めて、安堵のため息を付いた。

 翌朝。
 今日も門番をすべく出てきたメイスナイトは、門から右手方向の朝日を見上げていた。ギムはまだ要塞の中だ。
「あたーらしーいあーさがきたー、だス〜」
 希望の朝日に、思わず小声で歌が口を突く。メイスナイトの日課である。と、その肩にコツコツと何かが当たった。
「? 何だス?」
「メイス、おはよー!」
 メイスナイトが振り返ると、そこにはカービィが立っていた。
「か、カービィ、おはようだス」
 朝からまさかの来訪者に、ぎこちない挨拶を返す。一方のカービィは、嬉々としながら言葉を続けた。
「ねーねー、まほうつかいのかっこうしてきたよ。おかしちょうだい!」
 それを聞き、改めてカービィの全身を見やる。なるほど、確かにカービィは、魔法使いらしい黒いとんがり帽子を被っている。
「む、確かに魔法使いだス、スタっ?!」
 そこでメイスナイトは固まってしまった。その視線の先、カービィの右手に、『先端に星の付いた』魔法使いの杖が握られていたからである。
「どう? 可愛いでしょー」
 カービィが天使のような無垢な笑顔を向ける。そして軽く杖を振り、ポージング。
「そ、そう、だス、な……」
 カービィが握っているのは紛れもない、プププランドの至宝、スターロッド。そしてそれは、カービィの持ちうるなかでも最高クラスの破壊力を持つ武器でもある。
「ねー、おかしくれないのー? それとも、イタズラしていいのー?」
 この状況下、イタズラがイタズラで済まされるのか……昨日は可愛げがあった、いや今も可愛くは見えるカービィが、メイスナイトには一瞬、悪魔に見えた。
「……わしのお菓子をあげるから、ちょっと待ってるだス……絶対、暴れちゃ駄目だスよ……?」
「はーい!」
 清々しい朝日の元、がっくりと肩を落としたメイスナイトは要塞の中へと戻っていった。

 後日、この要塞から一隻の飛行戦艦が飛び立ち、プププランドは恐怖と混乱の中に叩き落とされることになる。通称『メタナイトの逆襲事件』。この大事件の土台に、要塞の完成を賭けた壮絶な頭脳戦と、それを守り抜いた一人の騎士(のお菓子)の貴い犠牲があったことは、あまり知られていない。

 もっとも、不審なぐらいに食べ物の管理に気を遣い、ともすればへそくりさえするようになったメイスナイトの姿に、仲間達は薄々何かを感じ取っていたという噂もあるのだが。

おしまい。




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 お読み頂きありがとうございます。ハガネカービィです。
 そんなわけで『お菓子』をお題にした短編小説、
 ベタベタ(?)にハロウィンネタでしたが、少しでもお楽しみ頂けましたでしょうか。
 というか、ギャグ的な物に挑戦したら不思議な作品になってしまいました。
 変だな、最初は『メタナイトは何故キャンディをくれるのか』を主題に、
 シリアスな作品を書くつもりだったのに……。

 さておき、企画しておいてなんですが、3000文字はやはり短いですね。
 殆ど1シーンしか入りませんでした。
 でも、普段は長文しか書かないので、新感覚でもあったり。
 これはこれで楽しいですね。個性も分かれそうです。

 そんなですが、もし感想などありましたら、感想掲示板↓に気軽にお願いいたします。
 http://www.knml.net/impre_bbs/read.cgi?no=1

 それでは、皆さんの作品も楽しみにしております!


※補足
 ファミコン版『夢の泉の物語』では、スターロッドの能力アイコンが魔法使いだったのでした。
 未プレイの方は↓のイラストをご覧下さいませ。
 http://www.knml.net/img/gift/ill/ill011.htm
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